こんにちは中西です。
最近何度かお話しした松本人志の「ドキュ
メンタル2」が、5週間かけて amazon ビ
デオで放送されていたのですが、
先日その最終話が終わりました。
芸人10人が各自100万円持ち寄って集まり、
密室の中で互いを笑わせ合うバトルロイヤ
ル企画。
制限時間6時間の中で、笑ったものは退出し、
最後に残った一人が優勝賞金1000万円を
手にするという、究極のお笑い企画でした。
全編通して非常に面白かったのですが、特
に最後の10分はとんでもないことになって
いました。
あまり言いすぎるとネタバレになるので
概要だけ言いますと、残り10分で2人の
芸人が残っていたのですが、それはつまり
「笑ったら100万円を失い、
笑わせたら1000万円を手に入れる」
という状況になったということです。
これは「笑い」という人間だけが持つ行為
における、いわば“極限の状況”が出来上が
ったということを意味していました。
こういう極限の状況に追い込まれた時、
芸人は、というより人間は、一体どんな戦
いを繰り広げるのか。
本当にすごいものを見せられた気がします。
そのラスト10分における芸人の攻防戦に対し、
その10分で行われた笑いのネタのクオリティ
だけを取り上げ、 「ユーチューバーの方が面
白い。つまらん」的な非常に的外れなレビュ
ーを書いている人が何人かいたのですが、
これはそういうネタのクオリティを見る番組
ではないわけです。「特殊な極限状況におい
て芸人(人間)はどうなるか」というある意
味で実験ですから。
日本の長いお笑い文化の変遷を考えた時に、
私自身は「この10分は笑いの歴史に残る映像
だ!(゚ロ゚;)」と思ったのです。
6時間の戦いが終り、最後に松本人志が感想を
言ったとき、彼もそのラスト10分に対し
「2人とも本当に素晴らしい!
歴史に残るレベルだった」
と言っていましたが、まったく同感でした。
で、ここからが本題なのですが、この
「特殊な環境における究極の実験」
であるドキュメンタル2を見ながら、
ずっと頭の片隅で、
過去に見たある映画
を思い出していました。
その映画は、私の中でこれまで見た多数の
映画の中でも、印象に残っている映画トップ5
には確実に入るほどの強烈な映画で、
「怖かった映画」ということであれば、
個人的にはダントツ1位の怖い映画でした。
その映画というのは、
という映画です。
10年ほど前に見たのですが、
映画好きの方は知らない人はまずいない
というぐらい有名な映画で、
「スタンフォード監獄実験」
という心理学の実験中に起こってしまった
大事件の実話をもとにして作られた映画です。
簡単にあらすじを言うと、 一般人から実験
に参加する人を募集して、2つのグループに分け、
ひとつのグループは囚人、もうひとつのグル
ープは看守という役割を与え、密室の建物の
中でそれぞれの役になりきって演技しながら、
2週間生活するという実験の話。
この実験が日数が進むにつれてとんでもない
状況を引き起こすのですが、実話だと思うと
本当にとても怖い内容で、人間の本質とは何
か非常に考えさせられる、とても勉強になる映画でした。
ドキュメンタル2を見ながら、この映画
「es[エス]」の「スタンフォード監獄実験」
を思い出さずにはいられなかったのです。つまり
「人間はどんな人でも、置かれた環境によって
人格が変わってしまう」という話。
実はスタンフォード監獄実験の 責任者だった
心理学者 フィリップ・ジンバルド氏が、
TEDという有名な企画で講演をしている動画
があります。
非常に面白いので、ここまでの内容に興味の
ある人は良かったら見てみてください。
▼フィリップ・ジンバルド:普通の人が
どうやって怪物や英雄に変貌するか
(高評価の数は2万!)
彼が実証した「善人であっても環境やシステ
ムによって人は怪物にもなってしまう」
というこの現象を
「ルシファー効果」
と言いますが、こういったことを学ぶといか
に自らが置かれている環境やシステムが大事
だということがわかりますので。
動画では、ある環境下においては普通の軍人
たちも凄惨な虐待を行なっていく事が語られ
ていますが、
日本で大昔からなくならない
「いじめの問題」
についても、私自身は教育の構造的な問題だ
から無くならないであろうと考えています。
「いじめ」もある種の「ルシファー効果」で
はないかと思うのですが、
全員が均質であろうとする教育の中では、
ちょっとでも異質な要素を持つ人間(かつ
弱そうな人)は排除しようとする「悪人」が、
一定の割合でどうしても出てきてしまう
のだと思われます。
それを一人一人の考え方や人間性を改善しようと
「いじめ絶対ダメ!」「いじめ、カッコ悪い!」
みたいなスローガンでいくら抑制しようとしても、
教育システム(教育環境)自体がいじめを
生み出しやすい構造になっているので、
今のシステム・環境である限り、そういった
「いじめやめよう運動」やCMなどは焼け石
に水にもならず、いじめはまず無くならない
可能性が高いと思っています。
(当たり前ですがいじめを肯定している
わけではありません。念のため)
前に取り上げた「無料レンタル傘のサービス
で返却する人が全然いない」という問題も
まったく同じで、
「最近の人はモラルが無い!」
「借りた傘を返さない人たちってサイテー!」
などと言っている人が多くいたのですが、
過去記事でも書いた通り、こんなのは完全に
「システムの問題」なのです。
あらゆるテーマにおいて
「システムの問題」を「人間性の問題」
として誤認する人
は大勢いて、そういう人は
「人間はシステムや環境によって
善にも悪にもなる」
という基本的なことを理解できていない
といえます。
こういう人は、何か人が絡む問題に直面
したときにムダに苦しんだり、的外れな
対策で多くの人に迷惑をかけてしまいか
ねません。なので、この認識の有無は非
常に重要なのです。
というわけで、今回紹介した動画や映画自体は
興味のある人だけ観て頂ければと思いますが、
「スタンフォード監獄実験」や「ルシファー効果」
といったものついては、人間理解を深めるため
にもとても重要ではないかと思いますので、
この2つについてはぜひ覚えておいて
ほしいなと思いますね。
それではまた。
es[エス]
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フィリップ・ジンバルド:普通の人が
どうやって怪物や英雄に変貌するか