- 2016-4-10
- おすすめ記事, その他・雑談, 受験が終わった後について, 受験の意味を考える, 大学生活について考える, 志望校・進路の決め方
こんにちは、中西です。
受験で目指す大学や学部にしても、資格試験で取得する資格にしても、仕事を選ぶにしても、それが自分にとって「好きなこと(好きな分野)」でないならほとんど意味が無いわけです。
興味もなく、嫌いなことをやっていたら、何のためにそれをやっているのかわかりません。もっと言えば、何のために生きているのかわからなくなるはずです。
この「好きなこと(好きな分野)」というものについては誰もが多かれ少なかれ悩んだことがあるかと思いますが、実はこの悩みには、大きく分けると2つのタイプがあるのです。1つは「自分の好きなことが何かわからない」という悩み。もう1つは、逆に「好きなことが複数あって、どれを選んだらいいのかわからない」という、ある意味で贅沢な悩みです。
前者の場合の対処法は「大学生活パーフェクト攻略法~ヤバいくらい本音で語る大学論~」で紹介させていただきましたが、後者のような「好きなことがいくつもある」という悩みはどうやって解決すればいいのか。
これも道は2つあって、1つは「もっとも自分に合った1個に絞る」という道です。そしてもう1つは、逆に「好きなことを全部やっちまおう!」という道です。
前者は、ようするに1つ以外は全部切り捨てて、その1つの道で「プロフェッショナルになる」とか「プロを極める」という生き方ですね。いわば一芸を貫く世界。おそらく仕事として認められやすいとかお金になりやすいのは、こちらです。
一方で「好きなことを全部やっちまおう!」パターンは、世間的なスタンダードとは少し違うかもしれません。またその道の権威レベルの超一流になることはできませんし、「プロフェッショナル~仕事の流儀~」からも密着取材のオファーはこないと思います(笑)。
が、こちらは「極める」という悲壮感よりも「そのプロセス自体を楽しむ」のがメインなので、幸せ感が高く、楽しみながら生きて行ける可能性が高くなる道です。個人的には人間が持つ本来の多様性により近いのこちらではないかと思っています。
この生き方の人は「何が本業かよくわからない」という傾向があるのですが、そういう生き方の指南書として、私の知る限りもっとも軽いタッチで読みやすく、かつ軽い雰囲気とは裏腹に深い話が書かれている本というのが岡田斗司夫さんの「プチクリ―好き=才能!」(幻冬舎)です。
出版されたのはもう10年以上も前ですが、今読み返してみても全く古さは0で、非常に興味深い実体験や事例が豊富に掲載されています。何より軽い文体でテンポもいいので読みやすいです。ちなみに爆笑問題の太田さんも以前この本を絶賛されていました。
「プチクリ」というのは、職業人として極めていく「クリエイター」ではなく、もっと気軽に、お金とかキャリアとか損得勘定とか関係なく、好きなことを楽しんでいこうよという意味で、頭に「プチ」がつけた「プチクリエイター」の略。
実際にそういう生き方をしている人の事例がたくさん掲載されているのですが、何より岡田さんご自身がそういう経歴の持ち主なのです。
岡田さんは「新世紀エヴァンゲリオン」で大ヒットを飛ばした株式会社ガイナックスを学生時代に立ち上げた創業社長で、その後のオタクキングや各種評論・コメンテーターとしてのテレビでの活躍、さらにレコーディングダイエット本の大ヒットなど、ご存知の方も多いと思います。
彼はほかにも、プチ店長であり、プチTシャツデザイナーであり、プチ喫茶店マスターであり、プチ映画プロデューサーであり、プチ脚本家であり、プチ監督であり、プチ編集長であり、プチイベントプランナーであって、それらを同時進行で進めておられたようです。また、大阪芸術大学の客員教授などもされています。
「プチクリ」は豊富な事例とともに、彼のそういった生き方の根本にあった考え方なども相当突っ込んで書かれていて大変面白いです。一芸を極めたクリエイターたちが、意外にプチクリをやっていたり、プチクリに憧れている側面もかなりあるという、クリエイターたちの本音も多数書かれています。
自分の「好き」の観点から才能を発掘する方法なども書かれているので、私の「好きなこと」論シリーズが面白かった人にはきっと参考になると思います。
たった1つの「好き」にすべてを賭ける辛くて厳しい生き方ではなく、いろんな「好き」を楽しめるマルチなプチクリを目指しましょう、という考え方です。
ブログを使ってプチラーメン評論家になっても、プチコラムニストでも、プチ映画評論家でも、プチ詩人でも、プチ小説家でも、プチデザイナーでも、好きなことなら「中途半端ではだめ」「儲からないと意味がない」なんて考えず、どんどんやって行ったらいいやん、という発想。
こういう発想が全く受け付けない人は読まなくていいですが、ただ実際にそういう生き方をするかどうかは別として、今後の生き方・働き方を考える上で、一つの事例・生き方のパターンとして参考になるのは間違いないかと思います。これから社会に出る学生の人も興味深く読めると思いますが、仕事仕事でやりたいことが全然できておらず心が何か渇いている気がする人は、忘れていた何かを思い出させてくれる可能性は高いですね。
今回はただの書評ではなく、「好きなこと」論シリーズの一つとして、非常に意味のある本だと思うのでご紹介しました。興味のある人はよかったら読んでみて下さい。
それではまた。
※追記:次回の記事⇒「好き」と「志」のバランスはどう取るべきか(実例)
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