- 2025-8-20
- 目標を設定する
こんにちは、中西です。
「目標を設定して紙に書くだけで実現する」という話が、自己啓発界隈で昔からよく言われてきました。
私の知る限り、これをビジネス界で最初に言い出して一気に普及したのが、20年以上前に出版されたあるマーケッターが書いた本です。
その著者は一時期、ベストセラーを連発していたのですが、その著者のある本に、こういうエピソードが書かれていました。
「数年前に紙に書いた目標が、後になって確認したら、全部実現していてびっくりした」
当時、そのマーケッターはカリスマ的な人気を誇っていたので、その後出版されたビジネス書には頻繁に「目標は紙に書けば実現する」みたいな話が出てきました。
正直、私はそれを最初に聞いた時から非常に疑わしく思っていました。
なぜなら、目標を紙に書いたところで、その目標を達成するためのプロセスを実行しなければ達成できるはずがないからです。
当たり前ですが、そのプロセスは非常に苦しいことが多いわけで、単に目標を紙に書くだけで実現するなら、甲子園球児はみんな全国優勝しなければなりません。
どの角度から考えても、紙に書くだけで実現するなんてことはないと思っていたのですが、
この話を信じて「とにかく紙に書けば実現するんだ」という話をしていた自己啓発作家は非常に多かったのです。
なので私の中では、この「紙に書くだけで目標は実現する」という話がビジネス書界隈でしょっちゅう出るようになってきた頃には、眉唾の話だと考え、全く信じていませんでした。
当然、書かないよりはましでしょうが、だからといって書くだけで実現するなら苦労はありません。
そしてこの話が普及する前には、この話を裏付けるイェール大学の研究があるとされてきました。
それは1953年に卒業したクラスの目標調査です。
イェール大学で1953年に卒業したクラスを対象にアンケートを実施し、その10年後に追跡調査を行ったところ、
卒業時点で具体的な長期目標を設定した3%の学生が、後にそのクラスの富の97%を占めていたという研究結果がある、という話です。
この話もビジネス書や自己啓発界隈でよく語られていました。
実際、私もこの研究の話をいくつかのビジネス書で読んだことがあり、「そういう研究結果もあるのだろう」と思っていましたし、この研究自体はそこそこ信じていました。
ところが、近年になって、このイェール大学の1953年の卒業生に対する目標調査そのものが「存在していなかった」ことが判明したのです(゚ロ゚;)
※参考:本記事下部に記載
なぜわかったかというと、その1953年卒業クラスの研究の文章はどこにあるのかという問い合わせがイェール大学に多数寄せられていたようで、大学側も調査したのです。
ところが、イェール大学の調査の結果、そのような研究もアンケート調査も行われていなかったことが判明。
記録そのものも存在していませんでしたし、1953年卒のクラス、あるいは他のクラスを対象としたとされる調査について記憶している卒業生も誰もいなかったのです。
ということで、イェール大学は公式に「そのような研究は存在しませんでした」と発表しています。
しかしまあ、なかなか怖い話だと思いますね。個人的にはホラーのような話だと思います笑
なぜこんなことになったのか、そもそも誰がこの話を広めてしまったのか。
実はこれについても、イェール大学の調査結果報告に書かれています。
1991年のある雑誌にそのような研究の話が書かれていたのですが、記事の著者は企業の社長でした。
その社長が何を参考に書いたかというと、ある専門家の音声テープが情報源だと言っていたそうです。
しかし、その専門家にさらに確認して情報源を尋ねたところ、「長年にわたって統計について耳にしていただけで、具体的な情報源はない」と返答されたとのこと。
これがイェール大学の調査結果でした。
結局、この記事を書いた社長が悪いのか、その社長が情報源とした専門家が悪いのか分かりませんが、
とにかく「存在しない研究結果」が、あたかも真実として存在するかのように、1991年以降30年間も信じられてきたということです。
この手の話は時々ありまして、映画化もされた非常に有名な
スタンフォード監獄実験
も、実は捏造だったという論文が後に発表されています。昨年、それに関する書籍も出ていました。
私もこの映画を見たのですが、この監獄実験で人間がいかに怖い存在かを感じましたし、これまで見た映画の中でも特に生々しくて非常にヤバい映画でした。
(スタンフォード監獄実験の詳細をご存じない方は検索してみてください。)
ただ、この実験自体が捏造だったようなので、あの映画を見て震えていた私の恐怖心を返してほしいという感じです笑
というわけで、「目標を紙に書くだけで実現する」みたいな話は、そもそもイカサマでしたし、そのイェール大学の研究も存在しなかったことが判明しました。
ただし、目標を紙に書くことが無駄かというとそうではなく、別の実験では
「目標を紙に書いた方が書かないよりも達成率が上がる」
といった研究は存在しています。
結局のところ、目標を作ったのなら、頭の中で考えるだけではなく、
【 どこかに目標を記録として残して、定期的に確認しながら、地味で地道な努力を積み重ねるしかない 】
という、普通に考えたら誰でも分かる結論が真実になるのだと思います。
※参考:Q. Where can I find information on Yale’s 1953 goal study?
https://ask.library.yale.edu/faq/175224


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