画像は和田秀樹氏の「世界一騙されやすい日本人 ~演技性パーソナリティ時代の到来」(ブックマン社)
こんにちは、中西です。
前回は、ショーンKさんの経歴詐称問題について取り上げました。今回は後編。
なお、前回も書きましたがこの問題を取り上げた理由は、読者さんの多くが“大学受験生”や“資格受験生”という「何らかの経歴(学歴)を身につけるプロセス」にいる方々だからです。
なのでこの問題を通して「経歴とは?」「学歴とは?」「実力とは?」というテーマを突っ込んで考えることに、一定以上の意味があると判断したので取り上げています。
で話を戻すと、前回は宿題を出しました。宿題の内容はこちら。
<前回の宿題>
ショーンKさんは経歴詐称をしたことを認めましたが、では仮に経歴は嘘でも彼には「実力はあった」と仮定します。この場合、ネット上に散見されていた以下の意見は、どこが的外れなのかを考えてみて下さい。
——————————————-
「一番大事なのは経歴ではなく実力。よって
ショーンkは経歴が無くても実力はあるため
また復活してほしい(復活できる)」
——————————————-
・・・というわけで、この意見のどこがおかしいかを考えるのが宿題でした。
残念ながらこの意見は的外れだと言い切れるのですが、その理由は“ある重要な視点”が決定的に欠けているからです。
前回の最後にお伝えしたように、その視点は「2文字」で表現できる言葉になります。その「2文字」こそが、学生時代はあまり意識することがなく、社会人になった途端に嫌でも毎日意識せざるを得なくなる「2文字」なのです。
その2文字とは、
「信用」
です。
どんな職業であろうと、ただ一つの例外もなく、「仕事をする」ということは「信用」が最重要事項になります。繰り返しますが“最重要事項”です。
これは一個人の仕事だけでなく、企業も組織も、商品もサービスも、社会はあらゆるものが「信用」という土台の上に回っているわけです。
で、こんな話は社会人にとっては当たり前すぎて話題にすらならないのですが、逆に学生時代には、この「信用」というものをリアルに肌感覚で実感することが難しいという理由で、話題になりません。
実際は学生時代においても、家族関係・友人関係・先輩後輩との関係・恋人との関係・その他いろいろな場面で、あなた自身の「信用」が(ほとんど無意識レベルで)見られていて、その「信用」が蓄積されています。
しかし、学生時代は「金銭のやりとり」というもっともわかりやすい指標がほとんど関係しない分、「信用」というものを強く意識するシーンが少ないわけです(例外はバイトのときなど)。
たとえば、あなたが何か物を買うとき、そのお店やそこで売っている商品を「信用」してお金を払っています。意識しているかどうかは別として、あなたはそのお店・商品を「信用」したからお金を払ったのです。
この文章を読んでくれている読者さんは、メルマガに登録して1日目の人もいれば、6年目の人もいます。そして6年目の人のほうが私をより「信用」してくれている可能性は高いです。
なぜなら、私から継続的にメルマガを受け取って下さっているということは、6年にわたり多少なりとも何らかの気づきや学びを得て頂いてるはずだからです。
一方で私から見ると、そうやって継続的にメルマガを配信することで、読者さんに対して「信用」を貯金しているということになります。
私は今までそれを意識しなかった日は1日も無いですが、その理由は「信用」さえ蓄積しておけば商売は成立するからです。逆に「信用」を無くしたら、商売はジエンドになります。
極端な話、たとえすべてを失っても、「信用」さえ残っていれば短期間で復活できるわけです。「信用」とはそれほどまでに仕事をする上で最重要なものになります。
例を出せばキリがないですが、こうやって世の中は「信用」をベースに回っています。
そう考えたとき、ショーンK問題に対して、「“経歴”なんかよりも“実力”が一番大事。彼には実力があるから復活してほしい」という意見がいかにおかしな話かが見えてくるはずです。
彼は仕事をする上でもっとも大事な「信用」を失ってしまったのです。しかもこれ以上ないくらいに“最悪の形で”です。
最悪の形で完全に「信用」を失墜させてしまった以上、「実力」などどれほどあっても全く無意味になります。
「ショーンKは声もいいし、顔の見えない声優やナレーションの仕事なら復活できる」といった意見も散見されるのですが、これもいかにも仕事の力学が見えていない人たちの意見だといえます。
なぜなら、たとえ顔が見えない声優やナレーションの仕事だとしても、世間から信用を完全に失った人に仕事を依頼した場合、その依頼した側の会社が「ショーンKに仕事を依頼している」という事実によって、世間や顧客(取引先)から信用を失うリスクがあるからです。
そんなリスクを抱えてまで、そのナレーションをあえてショーンKさんに依頼する理由がある会社は、世の中にどれほど存在するでしょうか。あるとすればショーンKさんに以前大きな世話になった会社とか、そういう過去に利害関係のあった取引先くらいだと思われます。
というわけで、ショーンK問題に対して「大事なのは経歴ではなくて実力だ!彼は実力はあるから復活できる!」といった意見は、仕事をする上でもっとも重要な「信用」という視点が完全に欠落しているという理由により的外れということになります。
P.S
まあ実際のところは、彼の場合は仕事の依頼が無くなっても、ある程度の種銭(貯金)さえあれば投資を生業(なりわい)にすればいいだけなので、おそらく食べて行けずに路頭に迷うようなことは無いはずです。あるいは「メディアでの無期限の活動停止」とのことなので、表立って名前を出さない仕事(普通にどこかの会社や組織に雇用される勤務形態)を選べばいいということになります。
P.S2
ただ、学歴詐称だけでなく、彼は年商30億円と言ってテレビに出て出演料ももらっていました。問題発覚後その年商30億円の根拠を確認した記者によると「起業時に28人の仲間と『年商1億円くらいを目指そう』と語り合ったので、全部足して約30億円というところから来ています」ということのようです(゚o゚;)。こんな「年商」の定義があるとは知りませんでした。
そうなると、子供の頃に私は弟と近所の公園で「年商100億円の会社を作るぜ!いえぃ!」と一度言ったような気がちょっとだけするので、これによりうちの年商は100億円ということになります。テレビ局の皆様、100億円企業の社長としての出演オファー、いつでもお待ちしております。
というわけで、日本のどこかかにこういう大嘘つき野郎人を雇ってくれる酔狂な会社かコネがあれば、彼は今後も路頭に迷わずに済むでしょう。あるいは大好きなアメリカに渡ってそこで彼の“経歴”を知らない人たちと新たな第二の偽りだらけの人生を歩むのもいいかもしれません。
いずれにしろご愁傷様。チーン。
ショーンK 魔女たちの22時 三畳一間から年商30億円