- 2025-11-3
- 経済の話
こんにちは、中西です。
アメリカで「ブルーカラーの人たちが高収入になる事例」が増えているということで、 SNSでバズっていました。
▼参考:米国で「ブルーカラービリオネア」現象 AI発展で潤う肉体労働者
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN15CNW0V11C25A0000000/?n_cid=SNSTW001&n_tw=1762028175
こちらの記事によると、 アメリカでは
「ブルーカラー・ビリオネア」
の現象が起こっていて、 配管工が今や弁護士よりも高収入になっていたり、
音響装置の修理技術者がポルシェに乗ってやってきたといった話が相次いでいるようです。
AIの進化によってホワイトカラーの仕事が今後ますますリスクが高まっていく一方で、
AIに今のところ代替されにくい肉体労働系の仕事が高収入になっているという、 ある意味でパラドックスのような皮肉な状況が起こっています。
皮肉というのは、 約10年ぐらい前に予測されていた「AIによって消える職業」とされた人たちが、 まさにそういった肉体労働系のブルーカラーの仕事の人たちだったからです。
ところが2023年あたりから、 ChatGPTをはじめとするAIが急速に普及して以降、
ご存知のように最もAIによって取って代わられる可能性が高まっているのが、 肉体労働者ではなく、
ホワイトカラーをはじめとする知的労働やクリエイターの人たちになってしまっているということです。
記事によると、 ニューヨーク・マンハッタンの自宅アパートの天井裏に取り付けたオーディオシステムが故障し、
その修理に来た技術者が「数千ドル」の修理代を請求したとのこと。
一方で、 その弁護士はウォール街の金融機関を顧客に長年法務サービスを提供してきた腕利きの弁護士ということで、
そんな弁護士でも顧客には1時間700ドルから1000ドルの手数料を受け取ってきたそうです。
つまり、 修理に来た技術者の方が、 ウォール街の金融機関から法務サービスとして受け取る弁護士手数料の何倍もの金額を受け取っているということになります。
少し前にもご紹介しましたが、 アメリカではすでに大卒の若者が就職できない状況が起こっており、
このままだと若者がスキルを身につけるチャンスを得られず、 低収入のまま高齢になっていくリスクが高まっています。
これは私も含めた氷河期世代が遭遇した状況と全く同じであり、 これまた皮肉なことに、
日本に構造改革を迫って日本の若者からスキルや人生を奪ったアメリカでは、
今度は自国の若者がAIによって、自分たちが潰してきた日本の以前の若者と同じ惨禍に見舞われているということです。
高額の授業料を払った大卒者が職にあぶれてしまっている一方、 ブルーカラーの労働者は引っ張りだこになっており、
この現象を「ブルーカラー・ビリオネア」と言われているという話。
ビリオネアというのは元々の意味は10億ドルの資産を持っている人だったと思いますが、
今アメリカで起こっているブルーカラー・ビリオネアというのは、 あくまで象徴的な表現としてビリオネアという言葉を使っているだけで、
年収としては10万ドル、約1500万円ほどになるようです。
それでも経営者ではなくブルーカラーの労働者が年収1500万円を普通に取れるようになってきているようなので、
これは多くの人が予想できなかった現象ではないでしょうか。
日本のSNSではこの記事がおおむね好意的に受け取られ拡散されているようですが、
残念ながら私は、 日本ではこの「高収入ブルーカラー」現象は起こらない可能性が非常に高いと考えています。
確かにAIによってホワイトカラーの人たちの失業リスクが高まっているのは同じなのですが、
日本の場合、 物価が高くなってもまともな積極財政は展開されない可能性が高いので、
そうである以上、 ブルーカラーのニーズはアメリカと同じように高まったとしても(というか超絶に高まっているのですが)、
ひたすら「貧乏暇なし」状態に近い状況になる可能性が高いです。
そして「貧乏暇なし」ですら難しかった場合は、 倒産・廃業するしかなくなります。
現にこの1年か2年ぐらいの間の、 ブルーカラーやエッセンシャルワーカー(介護士・保育士・看護師・運送業など)の人たちの業界の倒産件数は過去最高になっています。
例えば介護業界や運送業界、保育の業界もそうですし、さらには公立病院ですら赤字になっていて、
とにかくブルーカラーやエッセンシャルワーカー系の体を使った仕事をする人たちの業界は、 人手不足が深刻にも関わらず給料がまるで上がらず、 倒産件数が過去最大になっているのです。
これは100%完全に政府の政策の失敗によるものであり、 政府が正しい積極財政を実行できていれば、こんな事態にはなっていませんでした。
アメリカと違って日本のブルーカラーの人たちは忙しくても高収入になることはできず、
今のままだと倒産・廃業が引き続き激増して、 最も最悪のパターンである
【 供給能力の激減 】
が全国で起こっていきます。現に、もう起こりまくってます。
そして今、 この供給能力が激減していることによる弊害が出てきているのが日本です。
例えば運送業界も、 まともに運送ができなくなってきていますし、
介護業界も高齢者が激増して介護が必要な人が増える一方なのに、
それを供給する介護事業者は倒産が過去最高になっていて、 介護サービスが提供できない地獄のような状況になってきているのです。
看護師の人たちの待遇や、保育士や学校の先生もそうですが、
こういった現場で直接人に接してサービスを提供する人たちの待遇も日本はめちゃくちゃで、 成り手が少なくなってきています。
これは全部、政府(自民党)のせいです。
農家にしても政府が個別補償をせず、 減反政策などというバカな政策をやっているので、
食料安全保障が脅かされているだけでなく、 農家の担い手も減ってきて、 農業の供給すら崩壊してきているのです。
高市内閣で新たに抜擢された鈴木農林水産大臣の最近の発言も確認しましたが、 完全に思考回路が新自由主義者で、
「米の需要と供給のバランスを整えるべきだ」
などと極度の経済オンチなことを言っていて(政府は非常事態に備え、とくに米は需要を上回る供給が必要)、
「食料安全保障」
という基本概念すら鈴木大臣は知らない可能性が非常に高いです。
とんでもない人物を高市総理は農水大臣にしているのです。
また、 高市総理が税調会長に就任させた小野寺五典氏はバリバリの緊縮派だということは以前お伝えしましたが、
結局小野寺氏もガソリン減税と引き換えに増税を導入しようとしているなど、 全く積極財政の体裁になっていません。
さらに高市内閣は消費税を減税しませんし、 以前から私が言っていた通りの中途半端以下の積極財政になっております。
しかも最近は維新と連立しまして、 「身を切る改革」などという国民にとって何の意味もないパフォーマンスだけのポピュリズム政策を、
あろうことか高市首相自ら実行して、 月115万円自分の給料を削減したことが報道されました。
これを絶賛している国民が多いようなのですが、 全く何も分かっていないと思います。首相が自らの給料削減を通して、
「税は財源であり、国債発行は借金だから、財政を不健全にする。よって十分な財政出動はできない」
ということを国民に示したに等しいからです。
総理の給料を削減しても何の意味もないわけで、
「財源は限られているから、トップから範をしめす。このように、なるべく無駄を減らしていかなければならない!」
みたいな経済音痴の極地のイメージを国民に植え付けることにしかなりません。
要はやってることが緊縮に向かう方向でしかないと言うことです。
まさに国民受けのいい、 国民のルサンチマンを利用して自分たちの株を上げようとする、
昔からずっと維新がやってきたあまりに下劣な、全く誰も救われない最低のポピュリズム政策を高市さんまでもがしてしまっているのです。(連立したからでしょうが、やっていいことと悪いことがあります)
為政者が質素倹約的な発想に陥ると、必ず緊縮に進んでいきます。
300年前の享保の大飢饉をもたらした享保の改革、100年前の昭和大恐慌を悪化させた浜口雄幸内閣。
ずっと同じパターンを日本は繰り返しているのです。
(前者は尾張の徳川宗春、後者は高橋是清が正しい政策を実行しましたが、2人の共通点は「遊び人」でした。
一方で国民を飢饉と貧困の地獄に叩き落した享保の改革の徳川吉宗と浜口雄幸の共通点は、貴族・殿様であり「いいとこの真面目なボンボン」です。
真面目な「いいとこのボンボン」が庶民の苦労もお金の苦労も知らずに脳内だけで頭でっかちの「質素倹約」という綺麗事を標榜する結果、
緊縮が実行され、国民が貧困地獄に落ちてきたわけで、これを300年前から現代に至るまで、日本は延々繰り返しています。
「質素倹約」「切り詰め」「節約」
は、個人の姿勢として素晴らしくても、権力者として経済政策をその考えで行うと「合成の誤謬」という現象が起き、国家の経済全体では失敗します。
結果、国民は地獄を見て、国は崩壊に向かうのです。これを理解できない政治家を経済オンチといいます。)
高市総理が財政健全化を目指しているのは、 最初の所信表明の時から言っている通りであり、
私がこのメルマガで彼女の就任以前から言い続けてきた高市氏の財政認識の中途半端さが、 そのまま政策に早くも現れてきています。
石破総理の財政認識の最悪さもそうでしたし、 岸田総理の財政認識の出鱈目さの時もそうでしたが、
結局のところトップの財政認識のレベルが、そのまま政策に現れるという印象です。
総理大臣が給料を大きく削減したことを絶賛する状況と言うのは、極めて危険だと言うこと。
「身を切る改革」
というのは、本当にそれを突き進めれば、最終的に「国民の身を切る」ことにしかなりません。断言しておきます。
高市さんは彼女なりに頑張ってはいるのでしょうけれども、 今のところ国民から見れば、 ガソリン減税も喜んでいる国民が多いですが、
そんなものは当たり前のことをしただけであり、 評価するものではないと私は考えています。
例えるなら、 これまで友達をずっといじめてきた不良が、 いじめるのをやめただけの話です。
それを「おお!お前、ついにいじめをやめたか、素晴らしいぞ!!」と言って絶賛している人がいたら、 それは相当的外れな絶賛だと言えます。普通に戻っただけ。
高市内閣は今のところそのレベルであり、 全くまともな積極財政の手を打っていません。
(繰り返しますが、消費税すら減税していないのです。裏側でどんな事情があろうとも、していない事実は変わりません)
そして今後も高市内閣は希望が非常に薄いというのは、 彼女の財政認識を考えれば必然と言えます。
高市総理にしろ、 片山さつき財務大臣にしろ、 何とかしようと考えている姿勢は見て取れるので(あくまでこれまでの総理・財務大臣と比べて)、 できるだけ応援したいとは思いますが、
結局やっていることは
「不良がいじめをやめた」
レベルのことですので、 今のままでは到底国民は救われません。
例えば介護士の人たちの給料を最低でも2倍、できれば3倍にはしないと日本の介護業界はもう確実に崩壊しますよ。
山本太郎さんが言うように、 そのうち老人が道端で死んでいるような状況になる可能性すらあります。
私も母が介護士ですから、 しょっちゅう業界の現場の事情を聴いていますが、 もう特に地方の介護現場は崩壊寸前、 というか崩壊していると言っても過言ではない悲惨な状況です。
母の給料もありえないような金額で、どう考えても、その3倍は最低でも取らないとおかしいような金額なのです。
こんなことが全国中で起こっている。
この解決策は1つしかなく、 介護士の給料を何倍にも上げないといけない、ということです。
そのためには、政府が国債発行をして、お金を出せばいいだけ。
お金なんてキーボードで数字を打つだけで簡単に作り出せます。(信用創造)
そんなことすらやらなかったから、30年も国民は貧困化し、日本だけが世界中で衰退したのです。
そういった地獄の日本の現状を抜本的に救う政策を高市さんができるのかということですが、
高市さんが介護士の給料を2倍にすることはできないと断言しておきます。1.5倍すら無理。
介護士だけでなく、保育士も、看護師も、教師も、運送ドライバーも、誰も救われないでしょうな。
建設業者も引き続き潰れまくり、道路・橋・トンネル・水道管もまともに修復できないまま、インフラもどんどん崩壊していくに決まってます。そのプロセスで、何人の国民が命を失うか。
大規模・長期の国債発行を否定して、それらの問題を解決できるわけがないのです。
これはあくまで一例ですが、 こんな感じで「責任ある積極財政」などと言っていますが、
今のままだと論理的・構造的に必然の結果として、「見せかけの積極財政」で終わるのは必然です。少なくとも私にはそういう結果しか見えません。
高市内閣を80% 90%の国民が支持しているようですが、この国は常に大半の国民が1つの方向に向いているときは、真実は逆の部分にあることがほとんどです。コロナワクチンの時なんてその典型。
誰も彼もが同じ方向に向いていると言う事は、誰も彼もが理解できるレベルのことですから、それを誰かがコントロールしている可能性が高いと言うことです。
コロナワクチンの時は政府、グローバリスト、マスコミ、〇〇業界、〇〇会社、〇〇会らが自分たちの利益のために、ワクチンを打つことが正しいと国民を洗脳しました。結果、8〜9割の国民がそれが正しいと信じ込み懐疑派を総攻撃した。私は一生忘れません、絶対に。
どちらが正しかったかは、マスコミが報道しない1000人以上の厚労省によるワクチン死亡認定、60万人以上の超過死亡という超重大な事実を抜きにしたとしても、既に世界中のあらゆる研究と膨大なデータで結果は完全に出ています。
にもかかわらず、この超大問題に、高市さんは総裁選の時も、総選挙の時も、総理になった後も、一切触れない。一切、です。これ1つ見ても信用できるわけがないのです。
そんな感じで国民の大半が1つの方向に向いているときは、全体で狂っている可能性があるので要注意する。これが真実に近づくための基本原則だと私は考えております。
高市内閣もうまくいく可能性も一応ありますが、状況的には大いに疑ったほうがいい部分だらけ。少なくともそういう要素は無数にありますし、諸手を挙げて絶賛できるような状況では断じてない。
今の高市内閣の状況のままでは、 繰り返しますが、アメリカではいくらブルーカラーが年収1500万円のお金持ちになったとしても、 日本で同じようなことは起こらず、
ただただブルーカラーやエッセンシャルワーカーの人たちが安い給料で働かされ、人手不足でどんどん忙しくはなりますが、収入は上がらず、
それに耐えられなかった事業者はどんどん倒産・廃業していって、
最悪の「供給能力が崩壊」していくというパターンに、 今のままだとなる可能性がめちゃくちゃ高い、というかもうなってます。
もう上記の業界は崩壊してきてますよね、 供給能力。
ということで、 AIが台頭して逆説的にブルーカラーがお金持ちになっていく流れはアメリカでは今後も続くでしょうが、
日本では自民党による間違った経済・財政政策のせいで、 今後も倒産・廃業が激増していくでしょう。
AIでホワイトカラーがことごとくやばくなるのは、AI 2027の論文にあった通りですし、
それに加えて、ブルーカラーもエッセンシャルワーカーも今のままだと救われない。当然その顧客である国民も救われない。
個人的には政権交代しかないと確信しておりますが、
支持率80~90%の高市さんでもダメだった場合、 そこでようやく日本国民はそのことに気づくのかもしれません。
その時まで、日本の「供給能力」が持つといいのですが。


感謝!YouTube動画が500万再生を突破!








