- 2025-3-20
- 人間関係・友人関係, 仕事の話, 働き方・キャリアの話
こんにちは、中西です。
今回は、このメルマガではちょっと珍しい組織における集中力アップ・生産性アップに関する研究をご紹介します。
ほとんどの人は何らかの組織に所属して働いているわけですが、その組織には、チーム単位も含めて必ずリーダーが存在します。
生産性というのは、単に個人のモチベーションややり方によって高まるだけではなく、組織やチーム内の人間関係にも影響を受けており、特にリーダーからの影響は小さくありません。
今回ご紹介する研究は、そんなリーダーのあり方によって生産性が高まる、という話になっています。
結論から言いますと、
【 リーダーが謙虚だと、心理的安全性が高まり、メンバーの生産性が向上する 】
ということが判明しました。
※参考:本記事下部に記載
これは東京大学が2024年3月に発表した研究で、
「リーダーの謙虚さが職場の心理的安全性と生産性にどのような影響を与えるか」
を調査する目的で行われました。
謙虚なリーダーがいることで、チームのメンバーが安心して意見を言いやすくなり、本来の力を発揮しやすくなるかを検証したものです。
調査対象となったのは、複数の日本企業に所属する462名で、平均年齢は35歳。データはオンライン調査を実施して収集されました。
測定した項目は、
①リーダーの謙虚さ(自分の間違いを認める・他者の意見を尊重する・学び続ける姿勢を持つ)
②心理的安全性(メンバーが自由に意見を言える環境があるか、失敗しても責められない職場かどうか)
③プレゼンティーズム(体調が悪い時でも無理に働いてしまい、パフォーマンスが低下する状態)
この3つを測定し、統計分析を用いて関係性を検証しました。
研究の結果、謙虚なリーダーがいると、職場の心理的安全性が高まることが判明しました。
さらに、心理的安全性が高いとプレゼンティーズム(働いているが生産性が低い状態)が低減することも分かりました。
つまり、謙虚なリーダーが直接プレゼンティーズムを減らすのではなく、心理的安全性が高まることで間接的に生産性が向上するという流れがあったのです。
リーダーの謙虚さ
↓
心理的安全性の向上
↓
メンバーの生産性アップ
この関係が明らかになりました。要は、リーダーの謙虚さが組織のパフォーマンス向上に貢献するということです。
したがって、リーダーは単に権威的に指示を出すのではなく、メンバーを尊重し、リーダー自身が学び続けることでチームが強くなっていくということになります。
また、心理的安全性の向上も重要で、メンバーが安心して働ける環境かどうかによって生産性がアップすることにつながります。
繰り返しますが、心理的安全性の大きな要因がリーダーの謙虚さになるわけですね。
ちなみに、これまではアメリカや中国で同様の研究が行われていましたが、日本企業という日本の文化的文脈で初めて同じ傾向が確認されたとのことです。
これは、組織やチームで働いたことがある方なら、経験的に理解できる人も多いのではないかと思います。
私もこれまでいろんなタイプのリーダーの下で働きましたが、怖いリーダーや、いつ怒り出すか分からないリーダーの下では、
メンバーがビクビクしてしまい、まるで恐怖政治のようになってしまいがちです。
そんな職場では、安心して働けないため、結果的に生産性が低下するというのはよく分かります。
逆に、リーダーやトップが謙虚なタイプの人の場合、メンバーは安心して伸び伸びと働き、積極的にアイデアを出して実行していけるので、チーム全体の生産性がアップするのも非常によく分かります。
私のコーチングプログラムのメンバーさんの話を聞いていても、職場の状況について話すことは多々ありますが、
やはり、上司や先輩などリーダー的な立場の人の人間性に謙虚さがなかったり、信用できないと、メンバーは無駄なストレスを抱えてしまい、安心して働けなくなりやすいです。
逆に、これを読んでいるあなたがリーダーの立場にある場合は、改めて
「謙虚な姿勢で、他者の意見を尊重しているか」
「自分の間違いを認められるか」
「学び続ける姿勢を持っているか」
といった点を自問すると良さそうです。
そういえば、日本のホワイト企業として評判の高い岐阜県の未来工業という会社は、自己啓発界隈でも有名です。
創業者の山田昭男氏は、いわゆるトップダウン型の創業者とは違い、非常に謙虚な方で社員を大事にするトップのようでした。
だいぶ前に本を何冊か読みましたが、決して「社員をこき使いコントロールする」ような権威的なタイプではなかったと思います。
私が好きな同社の「常に考える」というスローガンも(会社や工場の至る所に貼ってある)、社員をこき使おうとするブラック企業とは真逆の発想です。
従業員を奴隷や駒のように使いたい会社は、何も考えないで言われた通りにやれる従順な従業員を望みますから。自分の頭で考えられると困るわけです。
まあこれは会社組織だけでなく、学校や国家でも同じで、構成員を奴隷化したがる組織は、自主性・主体性を望みませんからね。
話を戻すと、今回の研究は職場に関する話でしたが、学生の部活やサークル、その他のチームのリーダーにも当てはまると思います。
リーダー的な立場にある人は謙虚さの重要性を意識した方が良さそうですし、
組織を選ぶなら、そもそもそういうリーダーがいる組織を選ぶというのも大切になりそうです。
「リーダーシップ」
がある人というと、何となく有無を言わさず強引にメンバーを引っ張っていくイメージがありますが、
チームのパフォーマンスを最大化する本当のリーダーシップがある人とは、メンバーを尊重する
「謙虚さ」
がある人ということになりそうです。
※参考
謙虚なリーダーのもとで心理的安全性が高まりメンバーが本領発揮しやすくなる
―職場においてリーダーの謙虚さと心理的安全性が果たす役割―
https://www.rcast.u-tokyo.ac.jp/ja/news/release/20240315.html
The mediating role of psychological safety on humble leadership and presenteeism in Japanese organizations1
https://journals.sagepub.com/doi/full/10.3233/WOR-230197