- 2023-10-9
- 受験を突破する記憶術
こんにちは、中西です。
前回は、アメリカの大学が学習効率に関する過去100年分の研究(200件以上)を分析した結果、
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①分散学習(間隔を空けて覚える)
②想起練習(形を変えて思い出す)
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この2つが、最も効果のある王道の勉強法(のポイント)であることがわかった、と言う話でした。
今回は、この①について、もう少し突っ込んだ話を。
なぜ、分散学習が効果があるかと言うと、一度覚えて間隔をあけると、一旦忘れることができるからです。
一度忘れて「思い出す」と記憶に残るということですね。
「忘れる」という部分がポイントになるわけですが、この点で有名なのが
「エビングハウスの忘却曲線」
です。
非常に有名なので、ご存知の方も多いと思いますが、実はこのエビングハウスの忘却曲線は、かなり注意が必要な理論なのです。
どういうことかと言うと、二重に誤解されて世間に広まっているからです。
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■誤解1:「忘却率」ではなく「節約率」
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多くの人は「エビングハウスの忘却曲線」といえば、
「覚えてからどれぐらいの日数が経過すると、どれぐらい記憶に残っているか(どれぐらい記憶が失われるか)を表した曲線」
と理解しています。
忘却曲線のグラフを見ても、縦軸に「覚えている割合」などと書かれていることも多いです。
しかし実際は「覚えている割合」といった忘却していく忘却率ではなく、「節約率」の曲線です。
節約率とは、その知識を再び勉強する際に
「どのくらいの時間を節約することができるか」
を表したもので、
節約率=節約された時間÷最初に覚えるのにかかった時間
です。つまり、縦軸は「覚えている割合」ではなく「再び覚えるのにかかった時間」なのです。
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■誤解2:覚えたのは「意味を持たない音節」
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誤解1よりこちらの方がより重大な問題だと思いますが、エビングハウスの忘却曲線の実験は、
「意味を持たない音節の記憶」
に対する実験結果だということです。
つまり、「理解を伴わない単純暗記」をした場合の曲線だということ。
これが何を意味するかと言うと、
【 理解を伴って覚えた事柄は、この忘却曲線のようにはならない 】
ということです。
そりゃそうですよね。意味のない事柄を暗記するのは大変で、暗記しても忘れやすいわけです。
逆に、意味のある事柄を「理解して覚える」ようにすれば、意味のない事柄を無理に暗記するより「記憶に残りやすくなる」のは当然です。
ところが、エビングハウスの忘却曲線の話が展開される時は、大体この辺がごっちゃになっています。
「何を覚えても、この忘却曲線の通りに忘却していくんだ!」
みたいな話になってしまっていることが大半です(゚д゚;)
別の言い方をすると、
【 意味のあることを覚えたり、自分が興味があることを覚えたり、ちゃんと理解して覚えれば、この曲線のようにはならない 】
と言うことになります。
というわけで、非常に有名な「エビングハウスの忘却曲線」は、2つの点で誤解が伴って広まっており、特に
「意味のない事柄を暗記したときの忘却曲線」
だったという点で、勉強をするときに、厳密に参考にするようなものではないと言うことです。
(この忘却曲線にそったアプリなどもあるみたいですが(ーー;))
まぁ、もちろん一度頭に入れても忘れていく事は間違いありませんので、複数回にわたって「思い出す」必要があるのは間違いありませんが、
そのタイミングは、忘却曲線のタイミングに合わせる必要はありませんので、
あまりガチガチにこの忘却曲線の数字にとらわれないほうがいい、ということですね。
それではまた。