- 2025-2-10
- 受験を突破する記憶術
こんにちは、中西です。
睡眠中に記憶が定着するという話を聞いたことがある人も多いと思います。この脳の仕組みのことを
「SWR(シャープウェーブリップル)」
と言います。
このSWRは動物実験では覚醒中でも観察されることがあったのですが、人間の覚醒時にどのようなタイミングでSWRが発生するかはこれまで未解明でした。
それが分かれば人間の記憶についての理解がより一層深まり、様々な疾患対策への応用や、場合によっては仕事や勉強法などにも役立つ可能性が出てきます。
実はこのSWRが、人間が覚醒しているどのような状態の時に発生するかが、最近の研究で判明しました。
結論から言いますと、
【 ぼんやりと考え事をしている時に、記憶を形成する脳の活動が増える 】
ということが、2024年5月に発表された大阪大学・東京大学などの共同研究で判明しました。
※参考
「ぼんやりと考え事をする時に 記憶を形成する海馬の活動が増えることを発見」大阪大学
https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2024/20240522_1
今回の研究でポイントになるのが
「マインドワンダリング」
という脳の状態です。
マインドワンダリングとは、授業中や会議中にぼんやりとしたり、自動車を運転している最中に別のことを考え始めたりするような状態です。
これは脳が自動的に行う仕組みで、創造性や未来の計画を立てるような場合に役立つこともあれば、逆に集中力を妨げる要因にもなります。
このぼんやりと別のことを考えてしまうマインドワンダリングの最中に、記憶形成に関わる脳の活動であるSWRが増加することが分かりました。
研究を行ったのは大阪大学や東京大学などの研究チームで、研究者の中には書籍も多数でテレビのニュース番組にもレギュラーで出ていた、脳科学で有名な池谷裕二教授も参加されています。
被験者はてんかん治療のために脳に電極を埋め込んだ10人の患者さんで、約10日間、日常生活の中で脳波(SWR)を計測しました。
研究方法は思考内容のアンケート17項目を定期的に実施して、何を考えていたかを記録。その上で脳波データとアンケート結果を照合して分析しました。
その結果、睡眠中に記憶を定着させるこのSWRは、起きている覚醒時においては、
【 日常的によく起こるマインドワンダリング(授業中に考えごと、運転中にぼんやりするなど)のタイミングで頻度が増加する 】
ことが判明しました。
また、体の動きよりも思考の内容がSWRに強く影響することも分かりました。
研究者によると、SWRの活動をコントロールすることで、次のような疾患の診断や治療法の開発が期待されるようです。
・記憶障害
・認知症
・てんかん性障害
・ADHD(注意欠陥・多動性障害)
・PTSD(心的外傷後ストレス障害)
また、記憶力向上のための新しい脳トレや治療法の開発にも応用される可能性があるということです。
ざっくりまとめますと、
日中のぼんやりしている時間も、実は脳が記憶の整理という重要な作業をしている時間だった
ということですね。
これまでの研究では、睡眠の最中にそれが行われていることまでは判明していましたが、
今回、起きている間のぼんやりしている時間にもこのSWRが行われていることが分かりました。
この研究結果は、勉強や仕事の効率化、メンタルヘルスの改善にもつながる可能性があるため、今後の研究も期待されています。
ちなみに、こういったテーマに詳しい方なら「ぼんやり」という点で、
「デフォルトモードネットワーク(DMN)」
と同じなのかと感じた方もいるかもしれませんが、DMNとSWRは異なるものです。
今回の研究で調査が行われたSWRは、脳の海馬にのみ発生していますが、DMNは前頭前野や海馬など複数の脳領域に及んでいます。
また、SWRは記憶の再生や定着、学習内容の整理といった役割があるのに対し、
DMNは自己反省や過去・未来の思考、内的対話といった役割を持っています。
発生するタイミングも、SWRはマインドワンダリング中や睡眠中などですが、DMNは休息時やタスクに集中していない時などに活動します。
共通しているのは、「ぼんやりしている時」に両方起こりうるということではありますが、ざっくり言うと、
SWRは記憶関連の脳の処理、DMNは思考の流れや内省を支える常時稼働しているネットワークのようなもの
と言えます。
今回の研究で、SWRが「記憶の定着」に関わっていて、特に授業中や車を運転している時などのぼんやりしているような時(マインドワンダリング中)に活発になることが分かりました。
日常生活でついぼんやりしてしまった時に、あまり罪悪感を持たずに
「今、記憶を定着させていたんだ!」
と思えば、無駄な罪悪感も感じなくて済むのではないかと思いますね。