- 2021-7-1
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こんにちは、中西です。
先日のメルマガで、大学生の2人に1人が公務員志望になっている一方、
国家公務員になりたい人の割合が過去最低になったと言う話をしました。
理由は「長時間労働」が嫌われているからだったのですが、実は労働時間が長いだけでなく、
「仕事の内容」
自体も、国家公務員の多くが満足していないことが、人事院が行った意識調査で判明しました。
▼国家公務員の多くが「成長実感難しい」 人事院が意識調査 | 働き方改革 | NHKニュース
以下、記事から引用しますと、
「人事院が国家公務員の一般職を対象に行った意識調査で、業務の過重な負荷が依然、問題となっていることに加え、
多くの職員が自身の成長を実感することが難しいと感じている実態が明らかになりました。
国家公務員の人材確保や働き方改革が課題となるなか、人事院は、ことし2月、全国すべての国家公務員の一般職およそ28万人を対象に、ウェブ上で意識調査をおこない、
全体のおよそ2割にあたる6万人余りから回答を得ました。
調査は、職場環境や報酬などの現状を5段階で評価する形式で行われ、このなかでは、
「業務量に応じた人員配置」について、4割以上の人が否定的な評価を行う
など、業務の過重な負荷が依然、問題となっている実態が明らかになりました。
このほか、多くの職員が業務を通じて自身の成長を実感したり、将来のイメージを描いたりすることが難しいと感じていることもうかがえるとしています。(後略)」
…と言うことで「業務量に不満を持っている人は4割以上もいる」と言うのは、先日の「長時間労働によってなり手が減っている」という別の調査結果と一致しています。
今回は特にこの部分、
「多くの職員が業務を通じて自身の成長を実感したり、将来のイメージを描いたりすることが難しいと感じている」
というのも国家公務員の大きな課題になっているようです。
私は公務員にはなったことがないですが同じような経験があるので感覚的にわかりますが、
仕事をしていても成長の実感がなかったり、将来のイメージを描けないと言うのは、本当に辛いものです。
収入が安定していたとしても、生きている実感もなければ、仕事のやりがいも何もなく、
ただひたすら「安定した収入源を手放さないため」だけに、1日の大半の時間を使っているような状況になりますから。
しかもそういう毎日を何年も送ってしまうと、年齢の割に何のスキルもない社会人になってしまうため、
もし仕事をクビになってしまったら、民間企業に転職することもできず、まして自分で事業を起こすことなどほぼ無理な状況になりますので、
非常に不安・不安定な人生を歩むリスクが高まるのです。
どんな事態になっても絶対にクビにならないことが生涯保証されているのであれば、成長の実感がなかろうが、将来のイメージを描けなかろうが、
ひたすらその仕事にしがみつけば良い、と言う考え方もできるといえばできます(幸せかどうかは別として)。
しかし以前からお話ししているように、日本は30年近くにわたり緊縮財政が続いていて、
「公務員は政府の財政に負担がかかるから無駄だ!」
と言うアホな理由で公務員を削減し続け、先進国で公務員の割合が最も少ない国にまでなってしまっています。(詳細は先日のメルマガをご覧ください)
政府が180度方針を一気に転換して積極財政に切り替えれば、公務員はとても良い立場になりますが、
過去30年と同じ緊縮財政が今後も続く場合(今のところその可能性の方が高いですが)、
「骨太の方針」に入っているプライマリーバランス黒字化目標によって、政府を黒字化するために公務員を増やすことができなくなります。
よってその場合、長時間労働や成長実感のない仕事内容は、今後も変わらない可能性が十分あるわけです。
さらにそれならまだ良い方で、大阪で維新がやったような
「公務員をどんどん派遣社員に切り替える」
みたいな政策が実行されていく可能性も充分あり得ます。
維新のバックにはパソナ会長の竹中平蔵がいるわけですが、その竹中平蔵がそもそも菅総理の政策ブレーンに入っているわけです。
竹中平蔵は当然パソナが儲かる方向で政策を進めていこうとしますが、その方向性は財務省の緊縮財政と非常に相性が良いのです。
結果、今のままだと公務員がさらにどんどん削減されて、派遣社員(といっても大半がパソナ。大阪の窓口もほとんどがパソナに変えられた)が公務員の仕事をどんどん奪っていく可能性が十分あります。
つまり公務員だから首を切られないと言う事はなく、しかも首を切られたときには何のスキルもついていないので民間企業にも転職できない。自分で事業も作れない。
と言う路頭に迷う状況になり得ると言うことです。
資本主義社会において本当の意味で安定・安心と言うのは何かと言うと、
「今の職場を辞めても、必ず食べていける」
と言う自信(単なる主観ではなく実績等で裏付けのある確信レベルの自信)を持っている状態です。
「でもこの職場が好きだから、ここで働いている。」
「いつでも辞められるけど辞める理由もないし、仕事で成長できるし楽しいから、ここで働いている」
…こういった状態こそが本当の意味での安定・安心であり、組織人としての本当の意味での自由でもあります。少なくとも私はそう考えています。
逆にその状況を作り出せないと、首を切られたら終わりなので「今の職場に意地でもしがみつく」みたいな思考回路になります。
すると理不尽な要求を呑まざるをえなかったり、どんなに嫌な仕事も断れなくなります。
場合によっては会社の不祥事の隠蔽に加担しなければいけなくなったり。
辞めさせられたら食べていけないから、その職場に寄生するしかなくなるわけです。
そんな生き方・働き方で幸せですか?と言う話。
国家公務員として働いていても、成長実感がなく、やりがいも面白さもない仕事を何年も続けると、
「安定した収入」と引き換えに、逆説的ですが、不安定で不安な状況を作り出してしまう可能性が高まるのです。
上記の人事院の調査で「将来のイメージが描けない」と言う人が多いと言うのは、
そういった「このままではやばい」と言う状況を自覚している人が多い、と言う事かもしれません。
と言うわけで、国家公務員と言うのは収入が安定していていい仕事のようなイメージがありますが、
少なくとも複数の調査で長時間労働・成長の実感がない・将来のイメージが避けないと言う大きなリスクもあることが判明していて(もちろん全員では無いでしょうが)、
さらに緊縮財政がこのまま続いた場合は、クビになったり派遣社員になるリスクなどもありますので、
特に今学生さんで公務員を検討している人は、そういったことも踏まえて検討した方が良いでしょうね。
結局のところ、この問題も突き詰めれば緊縮財政が原因なので、
政府がその過ちを認めて、積極財政に切り替えることができれば、働く立場としての公務員は素晴らしい仕事になり、
公務員不足による長時間労働や、公務員のやりがい低下・将来のイメージが描けない不安定さの問題も解決するわけです。
国のために働く公務員の皆さんが、不安で不安定な状況で働き続けなければならないような国が、
まともな国であるわけがないと言うことです。
それではまた。