- 2019-11-23
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こんにちは、中西です。
前回の続き。
前回は江戸時代の「石田梅岩」という思想家がめちゃめちゃすごい人物だよ、という話でした。
先日、ふと日本史で習った石田梅岩を思い出し、
「石田梅岩ってどういう思想を広めた人だっけ?」
と気になって、関連書籍を読んでみました。こちら。
彼の「石門心学」とか「都鄙(とひ)問答」は日本史で習ってはいましたが、私の知識はこの単語まで。
ところが石田梅岩という人物を調べてみると、戦後の日本経済の立役者である松下幸之助が「都鄙問答」を絶賛して座右の書にしていたり、
同じく日本経済に多大な影響を与えた京セラの稲盛和夫さんが 「石田梅岩が私に与えてくれたものは計り知れない」と言っていたり、
さらにその前の世代では、福沢諭吉や、日本の資本主義の父と言われている渋沢栄一にまで影響を与えていたことが判明。(なんと新旧両方の一万円札になった人物に影響を与えているという(`ロ´;))
上記の本の著者山岡さんは「石田梅岩の教えは21世紀にこそ必要になる」とまでおっしゃっていました。
石田梅岩は日本史の偉人としても世間的にはほとんど無名に近いと思いますが、
我々が今生きているこの資本主義が作られた根本的な思想の土台になっている思想家、と言っても過言ではないと思います。
ということに遅ればせながらようやく先日気づいてしまい、私の中で石田梅岩は「やばい人物」に認定。
この石田梅岩の「労働観」というのが個人的に興味深かったんですよね。細かい部分ははしょりますが、彼は労働というものについてこのように考えていました。
「勤労がもたらす最大の恵みは『安らぎ』である」
このメルマガはまだ働いたことがない学生の人も多いわけですが、学生の間に「働くとはどういうことか?」について考えておくことは大事なことではないかと個人的に思います。
この「勤労=安らぎ」とはどういうことかについて、上記の山岡さんの言葉を引用しますと、
「注目すべきは『安楽』という言葉です。すなわち梅岩は、自分がすべきことに懸命に努めていれば、肉体的な苦労は多いだろうが、精神的には安楽が得られる。
『勤勉によってもたらされる安楽こそ、労働から得られる最上の喜びである』と説いたのです」
・・・ という話でした。
つまり思想家・梅岩は「働くこと」の第一の意義や目的を、報酬ではなく「心の安らかさ」だと考えていたということです。
「努力や勤勉は何にもまして、その安楽を得るための手段なのだ」
というのが石田梅岩の基本的な労働観のポイントだったと。
余談ですが、欧米の労働観というのはこれとは真逆に近いんですよね。
向こうの労働観は基本的にキリスト教の考えをベースにした「罰則的な労働観」になっていて、「労働=苦役」と考え、だからこそそれに見合う報酬にフォーカスする考え方になっています。
安らぎを得るのは休暇や家族とのプライベートの時間からで、労働からそれを得ることはありえないみたいな感覚になりがち。
こういう思想がベースにあるので、「いかに働かないか」というのが重要になり、労働する者=奴隷みたいな感覚になって、「金持ち父さん」みたいな発想になると。
どっちの労働観が正解かはわかりませんが、個人的に一つ間違いないと思うのは、日本人は基本的に労働と自分自身の成長を結びつける思想がベースになるので、
「労働=悪」的なニュアンスの欧米型の労働観には、どこまで行っても完全に納得するのは我々にはできないんじゃないかという気がします。
(かといって何も考えないで純粋に「労働」していたら、今の時代はブラック企業など巧妙に仕組まれた組織や構造から搾取される可能性が非常に高いのです。
この詳細を話し出すと長くなるので、それはまた別の機会に解説予定)
で、勉強の集中力を専門にしている私が、なぜこの話を興味深く思い、メルマガで紹介しようと思ったかと言うと、
(かなり勘が鋭い方や、このメルマガをよく読んでくださっている方ならピンときたかもしれませんが)
【 『手に入る精神状態(感情)』に意識をフォーカスして、それを目的にしている 】
からです。この視点が、私が受験生向けにアドバイスしている勉強の目標設定のコツ(の1つ)と本質的に全く同じでした。
10日ほど前にも、このメルマガで「やる気が高まる目標設定の裏技(実体験)」という件名で配信をしました。ポイントだけ復習すると、
「今日1日の終わりに手に入れたい感情を考え、それを想像してみて、その手に入れたい感情を目標にする」
というテクニックでした。
結局人間は何かを手に入れたい時に、その手に入れたいものそのものが欲しいというよりも、それを手に入れた時の感情が欲しいという側面が強くあるわけです。
そうであれば最初から感情自体を目的にしよう・・・という方法論。
学生なら勉強ですが、社会人なら労働。自分自身の本分に集中して取り組むという点では本質的には同じなので、
石田梅岩が唱えたように「勤労がもたらす最大の恵みは『安らぎ』である」というなら、
「勉強がもたらす最大の恵みは『安らぎ』」
ということも成り立つ可能性が非常に高いということです。
特に受験生は秋ぐらいから不安になる人がものすごく多くなりますが、どれだけ不安になっても、その不安を解消するベストな解決策は、やるべき勉強に集中して没頭する以外にないんですよね。
そうするとその瞬間は余計なことを考えることがないので、精神的には安定します。
これは梅岩のいう「安楽(安らぎ)」と同じだと言えると思います。
また、実質的にも合格する確率を最大限に高めるなら、目の前のやるべき勉強に没頭することが一番のポイントになるわけです。
そのことを理解して、実践できていれば、
【「自分はやれるだけのことをやっている」という「安楽」】
が得られるはずです。
もちろん不安そのものを完全に払拭することはできませんが、こういう「安楽」(もしくはそれに近い)精神状態で日々を過ごすことが出来た人は、
最終的に結果がどうなろうと「受験時代の日々を後悔する」という可能性は激減しますからね。
というわけで、何を目的に勉強するかというのは様々な視点から考えることができますが、
自分のやるべき事に集中して取り組むことで、 短期的には「今日1日やるべき事をやりきった」と言う満足感(≒安心感)が得られますし、
中期的には「数ヶ月後の受験で、合格の確率を最大に上げることが出来る」という安心感が得られ、
長期的には「自分の人生にしっかりと向き合って日々を過ごしている」という安心感も得られるので、
梅岩が言うように肉体的には多少辛かろうとも、そういった心の安らぎを手に入れることを目指した方が、納得いく人生を送れるでしょうし、
結局のところそれが一番生産性も高まるように思われます。
それではまた。