- 2013-9-9
- その他・雑談, 元アメブロ記事(13年2月~14年5月、修正中)
こんにちは!早稲田集中力研究会の中西です。
昨日は東京五輪開催決定という、近年まれにみる明るいニュースがあったわけですが、
本日は、昨日とは全く逆のこんな暗いニュースが飛び込んできました。
興味の有無がわかれると思いますが、個人的に軽くショックを受けています。
<今日のピックアップ>
小説家の原田宗典容疑者逮捕=覚せい剤と大麻所持容疑
このブログでは、この手の暗い系のニュースを取り上げることはまずないのですが(たぶん初めて)
個人的に原田さん(現在容疑者ですが今回は便宜上このように呼びます)の本をこれまで何冊か読んだり、トークイベントにも参加したことがあったり、大学の先輩だったり、
さらに言うと、実はこのブログを書きながら、原田さんの顔を何度となく思い出すほど少し思い入れがある方だったので
今回はちょっとこのテーマで書いてみます。(今回は受験勉強の話はなく、ほぼ雑談になるかと)
たぶんですが、大学受験生でこの方の作品を読んだことがある人は少数派だろうと思われますが、原田宗典氏といえば、とても面白いエッセイ・小説を書くことで有名な作家です。(ここでの面白いは「笑える」という意味)
たとえば私の読書経験上もそうなのですが、本や小説を読んでいるときに、「声を出して笑う」ということはほとんどないかと思います。
これはつまり、「活字だけで笑いをとる」ことがいかに難しいかをあらわしている1つの証左だといえます。
ちょっとクスっとすることはあっても、活字を読みながら「ぶははははー!!」みたいに声をあげて笑うことって本当に少ないと思いませんか(動画ならいくらでもあるでしょうが)
たとえば、お笑い芸人であれば、人を笑わせるときには「言葉そのもの」だけでなく、「言い方」だとか「声の大きさ」とか「表情」「身振り手振り」「全身の動き」などなど、
言葉そのもの以外にも「別の付加情報」を交えることで、笑いをとることができます。
「つられ笑い」というものもあるわけで、別に面白いことを言っていなくても、その人がよく笑うからつられて笑ってしまうことも少なくないわけです。
ところが、「活字」の世界においては、これらの「付加情報」を一切加えることができません。
純粋に「言葉のみ」で、笑いをとっていかないといけないのです。
よって、個人的な経験をもとに断言しますと、「活字のみで笑いをとる」ほうが「リアルで笑いをとる」よりも、50倍くらい難しいイメージです。
私は以前、ある仕事で100社ほどの企業を対象に毎月ニュースレターを発行していたことがあるのですが、
その中で、見開き2ページで「休憩コーナー」のような、そのニュースレターで扱うテーマとはあまり関係ない雑談(プチ小説)コーナーも担当していました。
で、このプチ小説コーナーというのが、完全に「活字のみで笑いを取りにいく」というコーナーだったんですけど、
まあこれが私が当時やっていた仕事の中で「一番楽しいけど、一番しんどい」という仕事だったんですね。頭に十円ハゲができるんじゃないかと何度も鏡を見たくらいです(笑)
他のかなり専門的なことを書くページは、わりとスラスラと筆が進むのに、その「笑いを取りにいく」のが趣旨のコーナーだけは全然筆が進まない。
筆が止まるというか、いくつものパターンが思い浮かびすぎて、そのどれが「正解」(=もっともウケる言葉のパターン)なのかを導き出すのに時間が異様にかかるということです。
ようするに「生みの苦しみ」というやつですが、このコーナーだけはそれが尋常じゃないくらいきつかったんですね。
実はこのコーナーは当時結構な人気を博していて、ニュースレターを読んでくださっていた企業さんの中には、
「他のページを読まないときはあっても、あのコーナーだけは毎回しっかり読んでるよ」とか「あのコーナーだけが唯一の楽しみで読んでるよ」とか
それこそ「声を出して笑ってしまったよ」とまでおっしゃってくださる方も少なくなかったのです。(軽くドヤ顔(゚~゚o))
ただ、たくさんの方に喜んでもらっている反面、月1回書かないといけないその見開きページが、心理的にけっこうな負担になっていました。
そのときによく思ったのが、冒頭の原田さんの仕事なのです。
「小説やエッセイという『活字のみ』で笑いをとりにいくのって、なんぼほどきついねん!原田さんはよくこれを本業にできるな。すごすぎる」
と思っていたわけです。原田さんの小説・エッセイにはその「活字のみの笑い」がふんだんにありました。
彼の青春エロ小説?の名作「十七歳だった!」を読んだときには、声をあげて笑いすぎて「ここが電車の中だったら大変なことになっていた(;`O´)」と何度も思ったほど。
活字でそこまで笑わせられることって、本当に少ないですからね。
作家でそれが出来る人といえば、あとは「夢をかなえるゾウ」の水野敬也さんくらいしか個人的には思い出せません。
ただ上記の通り、私もお遊び程度のコーナーではありましたが、お金の発生してしっかりした読者さんもいるメディアにおいて、本意気で「活字のみで笑いを取りにいく」というプチ経験があったので、
こういう作業を本業にして、それでご飯を食べていくというのは、尋常じゃない大変さではないかと以前から原田さんの作品を読むたびに勝手に推測していたわけです。
安易なことはいえませんが、彼が精神的に病を患ったという話も、お仕事とは無関係だとは思えませんでした。
そして今回の事件。何がどうなって、今回のような結果になったのかはわかりません。
彼は作家としては希有な存在だったと思うので、私自身は今回の件はただただ残念でしかありません。かりにどんな事情があったとしても犯罪は犯罪ですから。
しっかりと罪を償った後、改めてまたいつの日か「声を出して笑える」原田節が炸裂する作品が読めることを願っております。