こんにちは、中西です。
前回・前々回と、人の成長を支援する4つの手法
(ティーチング、コンサルティング、コーチング、メンタリング)
のうち、AIに代替されやすい順番について考察してきました。
一番代替されやすいのは、「知識提供」がメインになっている講師業、つまりティーチングでした。
その次は、前回お話ししたコンサルティングでした。
詳しくは前回と前々回のメルマガをご覧ください。
今回は、コーチングがAIに代替される可能性について考えてみます。
結論から言うと、
【 コーチングにもAIに代替される要素はありますが、ティーチングやコンサルティングよりはその要素が小さい 】
というのが私の見解です。
理由はいくつかありますが、まずコーチングは、知識の提供という要素がティーチングやコンサルティングに比べて、相対的に非常に小さいという点が挙げられます。
ティーチング(講師業)は知識提供がメインですし、コンサルティング(先生業)も相談を受ける中で解決策として知識提供をしていく割合が大きいです。
ところがこの「知識を提供する」という要素は、AIでいとも簡単に代替されてしまう部分です。
コーチングにもそうした要素が多少はありますが、全体の中では非常に小さい割合になっています。
知識提供がメインであれば、それはもはやコーチングではありません。
コーチングにはいろんな種類がありますし、私自身も第二領域のタスクを実行する支援という、少し特殊なコーチングをしています。
が、どのようなタイプのコーチングであっても、ベースには「人間と人間の関係性」が前提になっています。
もちろんティーチングやコンサルティングにも人間同士の関係性はありますが、その関係性への依存度が、コーチングは良い意味で高いのです。
コーチングはティーチングのように知識を提供して教えるものではありませんし、コンサルティングのように問題の解決策を与えるものでもありません。
コーチングは「解決策は本人が持っている」という前提に立っており、そのサポートをするのがコーチの役割です。
つまり、先生から教えてもらうのではなく、本人が自分で解決策を導き出すことを支援するのがコーチングなのです。
ですので、コーチングには最低限の信頼関係が必要になります。
例えば、私は学生時代に腹の立つ先生に何人も出会いましたが、ティーチングであればそうした強制的な関係性でも受け入れるしかない部分がありました。
しかしコーチングの場合、コーチがムカつく相手だと成立しないと思います笑
コーチングの前提には、
「多くの人は『正解を知ったから』動くのではなく、『誰かとの対話の中で、自分で決めたから』動く」
という人間の性質があります。
たとえば、私のプログラムで本日のコーチングで次の3つの課題に悩んでいたメンバーさんがいました。
①断捨離(1日1つ目標)がまったく手をつけられない
②1日の終わりに10分ほどかけて行う記録作業ができない
③②に関する内容を布団に入って寝ながら考えたいが、つい忘れてしまう
この3つの課題に対して、次のような対策を一緒に考えて導き出しました。
1つ目は、断捨離の目標を「1日1つ捨てる」から、「タイマーを設定して1日3分だけ断捨離に向き合う」に変更。
3分経って何も捨てられなくても、その日の分は達成とみなすことで心理的ハードルを下げる。
それでも全く手をつけられなかった状態よりは、かなりマシになるはずだと。
2つ目は、記録用ノートを夕食時に持っていく。
これにより、夕食後すぐに記録する流れを作れる可能性があるという話だったので、これを目標に修正。
3つ目は、そのノートを枕の上に置いておく。
そうすると寝るときに目に入り、記録に関することを忘れずに考えられるようになる。
このように、それぞれの課題に対してコーチと、もう1人のチームメンバーと一緒に答えを導き出しました。
その3つの対策を次の1週間で実行するという約束をしたので、来週報告してもらう予定です。
完璧に達成できるかは別として、少なくともこの3つの対策を、そのメンバーさんは実行してくれるでしょう。
その実行力の原動力になるのは、「解決策の知識を得たから」ではなく、「誰かとの対話の中で自分が決めたから」です。
つまり、自分以外の誰かと一緒に「こうやっていきます」と決めたからこそ、それが半ば“約束”のようになっており、実行しようというモチベーションが生まれるのです。
この部分は、AIには代替できないと私は思います。
AIは確かに優れた回答を提供してくれますが、どこまでいっても所詮は機械であり、意思も人格も自我も無いAIです。
人間のコーチやチームメンバーと一緒に対話しながら考え自分で決めたこととは違い、
AIとのやりとりでは「やらなきゃ」というモチベーションにはつながりにくいのです。
結局、相手は人間ではなく機械と言う時点で、
「誰かとの対話の中で自分が決めたから」
(誰かに自分が決めたことを見られてるから)
という動機づけは、どこまでいっても成立しません。
単発で特定の課題を深掘りするなどしてコーチングぽい事をやるなら可能ですが、
それはあくまで単発のその時だけの話であって、継続的な実行・成長・変容にはつながりません。
今やAIというアルゴリズムによって、まるでAIに人格があるように見せかける事は可能ですし、
自分を把握している・認識しているかのようにプログラムで見せかけることも可能ですが、
それが人間の“意識”ではないことを、私たちは理解しています。
だから、機械との約束には「人の実行力を支援する力」「強制力」「関係の継続性(による動機付け)」が働きづらいのです。
私がコーチングプログラムをやり出した初期の頃からお伝えしているのは、コーチングによる行動力の源泉となる
「人に見られている」
という感覚を活用する、ということでした。
これは特に私のコーチングにおいて重要な要素で、今の第二領域のプログラムの前に行っていた14年も前のプログラムでも、
「人に見られている感」
という表現でコーチングの効果を説明していました。
相手に見られているという意識があるからこそ、その人と一緒に決めたこと・その人に宣言したことをやろうという気持ちが生まれるのです。
この部分もまた、AIにはほとんど代替できない領域です。
「AIに見られてる感」
は無いに等しいからです。
だからAIとの対話では「一緒に歩んでいる感覚」も生まれにくく、変化への動機づけが弱くなりやすい。
確かに、AIの進歩はものすごいので、活字であれ音声であれ、まるで人間かのように反応してきますが、どこまで行っても、それは人間ではありません。
一見人間っぽく見せかけることができても、結局人間側はそれがAIであることを認識しているので、
相手が人間ではなく機械だとわかっている時点で、どれだけ人間ぽかったとしても
「人に見られている感」
「一緒に歩んでいる感」
は得られない(得られたとしても人間には到底及ばない)のです。
コーチングの本質がそこにある限り、コーチングが完全にAIに代替されることは無いはずです。
To be continued.


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