- 2025-4-3
- 睡眠効率アップで集中力UP, 運動の話
こんにちは、中西です。
先日は、「短時間のランニング」によって気分が快適になり、頭の働きが活発化して、集中力もアップするという、筑波大学の研究をご紹介しました。
この流れで、今回も筑波大学による運動に関する、先月発表されたばかりの最新の研究をご紹介します。
今回は、「運動と睡眠の質の関係」の研究なのですが、
結論から言いますと、
【 頭と体を同時に使う“マルチタスク運動”は、夜の睡眠の質を向上させる 】
ということが判明しました。
※参考:本記事下部に記載
深い睡眠をしている時には、脳波の振幅が大きくなって、客観的な睡眠の質を定量的に表す指標である「デルタパワー」が観測されます。
深い睡眠ほど、このデルタパワーの量が増加することが分かっています。
今回の研究では、「体を動かしながら頭も使うマルチタスク運動」によって、このデルタパワーが脳の中でどのように変化するか?を測定しました。
ちなみにマルチタスク運動としてこの研究で採用されたのは、
「スクエアステップ・エクササイズ」
というもので、これは25センチ四方の枠を横に4個、縦に20個並べたマットの上で、
指示されたパターンに従って、前後・左右・斜め方向へ連続的にステップしながら全身を移動させる運動とのことです。
このスクエアステップ・エクササイズは、
注意力・集中力・記憶力
などを駆使して体を巧みにコントロールしなければ遂行できないように工夫されています。
したがって、この運動は通常の「体を動かすだけの運動」ではなく、「脳の認知機能も使う運動」として採用されました。
(今回の研究では具体的な運動時間の記載はありませんが、スクエアステップ・エクササイズは他の研究でも5~15分程度で行われることが多く、今回も短時間の運動だったと考えられます)
被験者は、元気な平均72歳の女性高齢者を15人集めました。
研究によると、睡眠の質はホルモンの変化、特に性別によって影響を受けやすいことから、今回は女性高齢者を対象に選んだようです。
この被験者に、次の5つの条件をランダムに試してもらいました。
1. 軽い・単純な運動 (踏み台昇降)
2. 軽い・マルチタスク運動 (ステップ運動)
3. 中くらい〜強めの単純な運動
4. 中くらい〜強めのマルチタスク運動
5. 座っているだけ(安静)
この5つの状態をランダムに試してもらいながら、運動直後の前頭前野の活性度合いや、夜のデルタパワーの量を測定して、睡眠の深さを確認しました。
結果、一番効果があったのは、2つ目の「軽いマルチタスク運動」でした。
つまり、「単純な運動」は軽いレベルでも、中くらい〜強めのレベルでも、
デルタパワーの量は、頭を使う「マルチタスク運動」に及びませんでした。
興味深いのは、「中くらい〜強めのマルチタスク運動」よりも、「軽いマルチタスク運動」の方が良かったことです。
結果として、5~10分程度の短時間の「軽いマルチタスク運動」だけが、運動直後に前頭前野が活発になりました。
この前頭前野は前回もお話しした通り、判断力や集中力アップにつながる脳の部位ですので、要するに「頭の働きが良くなる」ということです。
そして何より重要なのは、この実験は日中に行われたのですが、
【 その日の夜にデルタパワーが増えて「深い眠り」になっている 】
ことが分かったことです。
運動した直後や数時間後といったタイミングでは、すぐに眠くなるわけではなく、
「その日の夜の睡眠が深くなった」
ということ。
(上記の通り、また他の研究でも明らかなように運動の直後は脳が活性化するので、むしろ眠気解消につながる)
つまり、夜にぐっすり眠るには、「軽いレベルの負荷の、頭も使う運動」が一番いいということになります。
時間も長時間ではなく、5~15分程度でも効果があるのはありがたいですね。
この研究結果を応用するとすれば、例えば
ウォーキングやスロージョギングなどの軽い運動をしながら、何か音声を聞くなどしてインプット・勉強をする
と、夜の深い睡眠につながりやすく、その後の日中の調子も高まりやすいということになります。
ウォーキングなどの有酸素運動をしながら音楽を聴く人もいると思いますが、少なくとも「夜に深い睡眠をとりたい」なら、
ウォーキングなどの軽い運動をしながら、少しでも頭を使うような「学習系のインプット」がおすすめですね。
一般的に、仕事や勉強における「マルチタスク」は生産性が落ちることが研究でも判明しており、良くないと言われていますが、少なくとも
「夜の睡眠を深くする」
という観点では、短時間の「軽い運動」と組み合わせるなら、「頭も使うマルチタスク運動」は悪くないということです。
睡眠の質に課題を感じている人や、軽い運動をしながら音声で頭を使うのもありな人は、参考にしてみてください。
※参考:マルチタスク運動は女性高齢者の「客観的な睡眠の質」を向上させる
https://www.tsukuba.ac.jp/journal/pdf/p20250313140000.pdf