- 2024-9-14
- メンタルの話, 勉強のモチベーションアップ, 受験を突破するマインドセット
こんにちは、中西です。
ここしばらくは、
【 人は「他人の幸せ」のために行動することによって「自分が幸せ」になれるのではないか 】
というテーマで、近年の科学的な研究を複数ご紹介してきました。
ちなみに、このテーマをシリーズでお届けしているのは、
自分の幸福感アップは、モチベーションアップにつながり、モチベーションアップは集中力アップにつながるからです。
よって、悲壮感の漂う自己犠牲のような話とは全く違い、自分の幸福感アップに関わる本テーマは、
今後の仕事や勉強のパフォーマンスを決める上でも、本質的にとても重要な話となります。
前回までは、2021年に発表されたニッセイ基礎研究所のレポート、
「他人の幸せの為に行動すると、幸せになれるのか?―利他的行動の幸福度への影響の実験による検証―」
にて、人間の「利他的行動」と「幸福度」の関連が詳しくまとまっていたので、そちらを引用しつつ考察してきました。
このレポートの結論としては、国や年齢や貧富の差、与える内容・金額に関係なく、
【 利他的な行動は、人の幸福感をアップさせる 】
という結論でした。
ただ、ここまでの話は、あくまで「人間」を対象にしたものでしたが(まぁ当たり前)、
今回は、人間だけでなく、動植物も含めた「生物全体」で、この利他行動について考察した興味深い記事がありましたのでご紹介。
生物学者で青山学院大学教授・米国ロックフェラー大学客員教授の福岡伸一さんがインタビューを受けて回答した記事だったのですが、
この福岡さんは、以前
「生物と無生物のあいだ」
という新書が大ベストセラーになった方で、ご存知の方もおられると思います。
この福岡さんが、人間に加えて、動物や植物も含めた利他行動について、脳と遺伝子の観点で語っておられました。
▼《福岡伸一教授が教える「利他的な脳」》最新研究で明らかになる遺伝子に備わった「人助け」をするしくみ「積極的に他者を助けると、生物として強く、幸福に生きられる」(マネーポストWEB)
https://news.yahoo.co.jp/articles/a77d0690e8d9d1f7662f1f2c6b08235f928dbd44
前回までご紹介してきた研究は、あくまで被験者に実験を行って、アンケート調査で幸福感アップを計測すると言うものでした。
今回の福岡さんの話は、もっと根本的に、
人間を始めとする生物の遺伝子や脳に組み込まれている「利他の回路」についての話になっています。
非常に興味深い話でしたが、長い記事なので個人的に興味深かった箇所を一部引用します。
—————————————–
「人間の寿命がここまで長くなったのは、私たちが持つ“利他的な脳”の賜物」
「生殖しなくてもいい自由がありながら人類が繁殖し、これだけ長寿化できたのは、
損得勘定を抜きにして他者を助けようとする“利他性”が脳の神経回路の基礎メカニズムとして備わっているからです。
とりわけ生殖年齢を終えた世代、おじいさんおばあさんたちが次世代に積極的に知恵を授けてきたことが大きい」
「最新の研究によって生物には遺伝子レベルで利他的な振る舞い、つまり“人助け”をする生物学的なしくみが備わっていることが明らかになりつつある(中略)
特にアメリカでは“利他的な脳”を解明するための大規模な実験や論文が次々に発表されている。
福岡さんは脳神経科学の第一人者であるドナルド・W・パフ氏がそれらをまとめ、解説を加えた科学書『利己的な遺伝子 利他的な脳』(集英社)を翻訳・上梓した。」
「積極的に他者を助けて脳に存在する“利他性”に関する神経回路を活性化させることで、自分自身も生物として強く、また幸福に生きられるのです」
「生物学の世界においては長らく真逆の理論、つまり『生物の本能は利己的である』という説が主流だった。
そのきっかけはイギリスの生物学者リチャード・ドーキンスが1976年に出版した『ザ・セルフィッシュ・ジーン(利己的な遺伝子)』という本がベストセラーになったこと。」
「このように人間が他者のために行動できるのは、ほかの生物と同様、遺伝子レベルで利他性が組み込まれていることに加え、脳に備わった特殊な回路にも理由がある。
利他性を発揮した際の人間の脳の状態を徹底的に調査した結果、他者と自分を重ね合わせ、肯定的にとらえる働きがあることが判明しました。」
「つまり私たちが利他性を発揮すればするほど、他者とのコミュニケーションが円滑になり、お互いに恩恵を受けられる」
「ただし、利他性を発揮するための脳の回路は気温の上昇や水不足といった危機的状況下に置かれたり、利己的な考えを持つ仲間とつるむことによって低下することもわかっています。」
—————————————–
・・・こんな感じです。
福島さんの話は、遺伝子レベルや脳の回路の観点からの利他行動についての考察でしたが、とても興味深い内容です。
先日メルマガで紹介した研究を踏まえ、私がその時お話ししたのは、
「2歳未満の幼児ですら、利他行動で幸せな気分になれるのなら、それが人間に本来そなわっている資質なのではないか」
ということでした。
福島さんの話を聞く限り、遺伝子レベルや脳の回路として、人間には利他行動が行われるように組み込まれているようです。
ただ、記事のコメント欄を読むと、福島さんの見解には概ね賛同する意見が大半ですが、一部に懐疑派の意見も見受けられます。
懐疑派の意見はざっくり言うと、
「政治家・官僚・企業・マスコミなどを見ても、利己的な行動を取っている連中も多い」
というような意見でした。
これは私に言わせれば「仕組み」の問題ですね。
以前あるベンチャー企業の天才経営者の元で働いていた時に、話の流れでその方に
「会社を作っていく際に、やはり性悪説が前提になりますよね?」
という質問をしたことがありました。その時にその方がおっしゃったのは、
「人間には性悪説も性善説も両方あるから、
『性善説を引き出す仕組み』を作れば良いんや」
ということでした。目から鱗でした。
実は、政治家にしろ官僚にしろマスコミにしろ企業にしろ、突き詰めると全て「仕組み」の問題です。
「仕組み」が間違っているから、そこに所属している人たちもどんどんおかしくなっていく。簡単に言うと、悪に染まっていく。
腐敗している自民党・財務官僚・マスコミ・企業に共通しているのは、
【 絶対的な権力と安定が長期的に保証されている 】
という点です。
こういう組織は時間の経過とともに必ず腐敗していきます。それは古今東西の歴史も証明しています。
企業も本来はリスクのある組織ですが、大企業となり、何十年にもわたって長期的に安定している状態が続くと、必ずと言っていいほど腐敗していきます。
それでもうまくいっている企業は、何らかの「腐敗しない仕組み」が、内部で必ず作られているのです。
コメント欄には「内部留保を貯め込んでいる企業も利己的だ」という見解もありましたが、
これも仕組みの問題で、法人税を上げることで解決します。
(経営者は税金で払うor社員に払うの2択なら、必ず「税金で取られる位なら、社員に還元しよう」となるからです)
そんなわけで、一見利己的に見える人たちも、腐敗した組織の中で腐敗してしまっているだけであり、
「性善説を引き出せる仕組み」
の中にいれば、性悪な部分よりも性善の部分を引き出せると言うことです。
前回お話しした通り、人間は性悪説も性善説も、両方の要素を備え持っているからです。
というわけで、前回までの研究は被験者本人にヒアリング調査をしたり、幼児の表情の確認など主観的な要素もある研究でしたが、
生物学のトップの専門家によると、遺伝子や脳の回路に
「利他的な行動を取る」
ように組み込まれているようです。そうするとやはり人間は根本的に
「他人の幸せのために行動すると、自分も幸せになる」
というのが、元々備わっている資質である可能性が高そうです。
To Be Continued