- 2023-12-8
- 経済の話
【今日のFocus】
「『子供3人以上で大学無償化』の政策は、逆に
政府が少子化対策にお金を出す気がない証拠」
【解説】
政府が3人以上の子供を持つ世帯について、大学の授業料を無償化する方針を固めました。
この政策に対する国民の意見は、恐ろしいほどに不評です。私が見た限り、全面的に肯定する意見はほとんどありません。
不評の理由は様々ありますし、この政策は日本が抱える多くの潜在的な問題を浮き彫りにしているので、興味のある方は不評の理由をご自身でも調べてみて下さい。
子供が1~2人の世帯との「不公平感の強さ」も不評の理由の一つです。
何より、3人目を産めば大学が無償化するからといって、この最悪最低の日本の経済状況で、子供を増やそうとする家庭がどれだけあるのか。
総理就任直後から嘘ばかりついて国民を裏切っている岸田総理率いる自民党が、20年後まで約束を守る保証もどこにもありません。
そもそも少子化の最大の要因は、1人目を産まないどころか、それ以前に「若者が経済的な要因で結婚ができないこと」であることが完全に立証されています。
少し前にようやく総理もその根本原因を認めたわけですから、今回の政策を仮にも「少子化対策の一環」ということ自体が狂っていると個人的には思います。
その意味で、確かに「異次元の少子化対策」であるのは間違いありませんが、岸田政権と財務省は、少子化対策を本気でする気が全くないとしか思えません。
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<編集後記(雑談)>
この政策は、本当に日本の様々な根深い問題が内在していると個人的には思います。
▼“子ども3人以上”大学授業料を無償化へ
https://news.yahoo.co.jp/articles/81fe7431048676b12f6c476d37a78e57d557540f
上記の記事では、19歳の子供を持つ親御さんがこんな意見を言っています。
「3人いようと、1人いようと子育てをするうえでは、みんな一生懸命子どもを育てているわけだから。(子どもが)これだけいるからお金出しますよ。1人だと出しませんよは、ちょっと私ははらわたが煮えくりかえってます」
全く同感です。コメント欄では、
「2人目は授業料を半額、3人目が全額を無償化なら納得できますが、こんな不公平な政策は納得いかない」
という見解を1万人以上が高評価していました。
私に言わせれば、大学が抱える諸問題は一旦脇において、あくまで「少子化対策」としてやるなら、1人目も2人目も3人目も、全員大学の授業料を無償化すれば良いだけです。
経済的に苦しくて結婚ができない・ 1人目が産めないから少子化になっているのに、一体政府は何をやっているんだろう?という感じです。
詐欺的だった別の少子化対策の「児童手当」における3人目のカウント方法なども、政府(財務省)の
「本当は少子化対策に極力お金を払いたくない」
という強い意思がハッキリ見える内容でした。
さて、この一連のあまりにも的外れな「異次元の少子化対策」の問題の本質は、どこにあるのでしょうか。
その真相を、皮肉にもある有名なエコノミストが「無自覚に」語っていました。
エコノミストで経済評論家の門倉貴史さんが、上記の記事のトップで「エキスパート」として、今回の政策における意見を、このように述べておられます。 【 】は中西が追記
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子供が3人以上いる世帯は大学の授業料が全員無償になり、子供が2人の世帯は全員有償というのでは、不公平感が強すぎる。
また大学に入るまでは教育費の負担が続くことになるので、少子化対策としての効果も弱いものになる。
【 財源が限られている以上 】、3人目以降の子育てに追加的にかかる費用を子供が小さいうちから支援するのが妥当ではないか。
たとえば、第3子以降の「児童手当」を現状(月1万5千円)の2倍の3万円ではなく、4倍の月6万円するなどの政策のほうが、少子化対策としては効果が大きいし、不公平感も少ない。
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・・・という意見。確かに
「財源が限られている」
という前提に立つなら、門倉さんの意見は妥当だと思います。
今回に限らず、門倉さんは良心的な見解が多いですし、個人的に経済評論家としては好きな方なのですが、
以前からこのメルマガでも何度か指摘した通り、門倉さんは思いっきり財政観を間違えています。
「良心的だけど財政観を間違えている」
という言論人・知識人・著名人はかなりいます。
ジャーナリストで日本保守党を百田尚樹さんとともに立ち上げた有本香さんも、個人的に非常に好きなジャーナリストですし、極めて良心的な見解が多いのですが、
残念ながら、百田さんとともに見事なまでに財政観を間違えています。
見分け方は簡単で、
「財源は限られている」
と主張している人は、100%完全に財政観を間違えていると断言できます。
理由は、もうこのメルマガの読者さんには言うまでもないでしょうが、
【 財源など国債を発行すれば、いくらでも作り出せるから 】
です。
ところが「財源は税金でまかなうしかない」と思い込んでいる著名人・知識人・言論人があまりにも多すぎるせいで、
その無知を、財務省の官僚たちに付け込まれ、
「国の借金プロパガンダ」「財政破綻論」
という嘘を信じ込まされてきたのです。
結果、政治家も国民も、プライマリーバランス=政府の収支を黒字にしなければならないと思い込まされ、その当然の帰結として、
「政府の支出を減らして、収入を増やす」
という緊縮財政をせざるを得なくなり、30年かけて日本は衰退したのです。
「財源が足りないから、税収や社会保険料を増やさなければならない。」
という形で、税金が権力の源となっている財務官僚にとって、極めて都合の良い「増税」の方向に全てを持っていかれたのです。
増税どころか、財源として税金を徴収する必要そのものが「全くない」にもかかわらず。
こういった前提をしっかりと理解していれば、
「子供を3人以上産めば、大学の授業料を無償化する」
と言う政策が、「少子化対策」として、どれほどまでに凄まじく的外れな政策かがわかるはずです。
「財源が限られている」
と言う思い込みが、このおかしな政策の根底にあるということです。
そういえば、京都大学の藤井聡教授は、この政策について徹底的に茶化して、珍しく笑いを取りに行っていました。
この政策があまりにもバカバカしいせいで、ご本人は自分で解説しながら爆笑につぐ爆笑で、もう笑うしかないと言うレベルのようです。
▼藤井聡(京都大学大学院教授)『岸田総理“#意味不明”#少子化対策』『#岸田総理 ついに異次元〇〇メガネと呼ばれる!?』おはよう寺ちゃん残業中 12月7日(木)
特に岸田総理の増税メガネに代わる「新しいあだ名」が出てきた話では、引くほど笑いすぎなのですが笑、まあ気持ちはよくわかります。(11分45秒あたり)
一応フォローしておきますと、上記の動画は、タイトルに「残業中」とあるように、2時間近くのラジオが終わった後の、補足的な動画です。
メインのラジオの放送では、逆にとんでもなくブチ切れておられます(内容は自民党の派閥パーティー問題の件。これを岸田総理が「自粛」で済まそうとして逃げたことについて)。
藤井教授は本編で腹が立ちすぎて、「残業中」のコーナーではもう笑うしかないと言う状況だったのでしょう。
といっても、全て自覚されていて、怒りの感情を出したり、爆笑したりすることで、わかりやすく伝える意図が根底にあるわけです。
※聴きたい方のために本編のブチ切れシーンの少し前から再生できるリンクを貼っておきます。
▼藤井聡 (京都大学大学院教授)【公式】おはよう寺ちゃん 12月7日(木)
ようは知識人・言論人を始め、日本中の大半の国民が、
「財政と貨幣に対する認識を間違えている」
という事実が、今回の政策の根底に厳然として存在すると言うことです。
税金を財源にする必要など1ミクロンもなく、国債を大量に発行しても、何一つ問題は起こりません。間違ってたら死んでもいいです。
(たまに「「財政出動すると円安になるから危険」などと言っている人がいますが、こういう人はデフレの現実を何も理解していません。
それで円安になるなら、アメリカはコロナで大規模な財政出動をしたので超ドル安になっていなければおかしかったのですが、現実にはドル安になどなってません。
需要不足でピンチの時に、大規模な財政出動によって実体経済が強くなるのですから当たり前。
文字だけでしか経済を理解していない経済学者や、事業経験も企業で働いた経験もない政治家・知識人・インフルエンサーなど、
お勉強だけして肌感覚で実体経済を理解していない頭でっかちの人ほど、こういう「財政出動は円安リスク」「国債の大量発行でハイパーインフレ」みたいな無駄な心配をしがちです。
この問題で真実を理解するには、「正しい財政認識」とともに「実体経済の肌感覚の理解」(普通の社会人レベル)が必要だというのが私の持論です。
認識を間違っている人は、必ずと言っていいほど、どちらか1つ以上が欠けています。
ただし、「貧困問題を解決する本気さ」や「国民を救う気持ち」や「国民の苦しみにより添う気持ち」などが強くある人は、
実体経済に対する肌感覚を持てていない経験不足を補える可能性が高まる、と言うことはあります。
芸能人出身の山本太郎さんや、世間から隔離されやすい学者なのに認識が完璧な京都大学の藤井聡教授なんかはそのタイプではないかと言う気がします。
しかしそもそも経験がない人は、お金を必死で稼いでいる庶民の苦しみが理解できず、そのような真剣に問題を解決しようと言う気持ちにも至らないことが多い、というのが私の実感です。
その典型が、自民党の世襲議員や財務省の官僚といった国民の敵と化しているクズ連中なわけですが。
話を戻すと、国債の大量発行で問題になるのは、デフレによって生じているあらゆる問題が解決した後のインフレ率のわずかな上昇のみ。
それをほんの少しだけ注意してチェックしておけばいいだけ。
その時はすでに相当な好景気ですから、インフレ率の上昇なんてデフレの地獄に比べれば天国といっても過言ではありません。
その時初めて、それこそ消費税を増税するなり、一時的に税金を増やすなり、日銀が金利を上げて需要を冷ます政策をすれば良いだけ。
それを景気を良くする前から、デフレの状況で過剰に恐れて、財政出動をしようとしない政治家や、経済の実態を理解できない経済学者・知識人・著名人・メディア人が腐るほどいるのですが、
彼らもまた財務省の官僚とともに、国民の敵である事は間違いありません。)
というわけで、「子供3人目以降の大学の授業料無償化」の政策は様々な問題が内在していますが、その根底に厳然と存在している
「財源は限られている」
という財務省のプロパガンダに洗脳された100%完全に間違った認識を改め、
「税金は財源ではない」
という客観的事実を、一刻も早く全国民が知らなければならないのです。
P.S.
「編集後期」って一体・・・