- 2023-6-18
- 経済の話
※このメルマガは、「正しい財政観」を1人でも多くの方に広めるため、水曜日と日曜日は不定期で経済ネタを配信しています。(※本記事はメルマガの転載です)
こんにちは、中西です。
6月16日(金)に「骨太の方針2023」が閣議決定されました。
これは毎年6月に更新されていて、今後の政府の経済・財政政策の基準となる非常に重要な方針になります。
このメルマガでも毎年取り上げてますが、これまで特に大問題だったのは、
「プライマリーバランスの黒字化目標」
でした。このプライマリーバランスとは
「基礎的財政収支」
と呼ばれるもので、要するに、政府の収入と支出のバランスをとって黒字にしましょう、と言う方針になります。
この「PB黒字化目標」がどれほど大きな間違いで、この間違いこそが日本を衰退させている真因だという話を何度もしてきました。
(今回は解説しませんが、ポイントだけ言うと、「政府の黒字」は、そのまま「民間の赤字」とイコールであり、国民が貧困化するからです。政府を黒字にするためには、増税や社会保険料等の値上げをするしかなくなるため。
結論としては、政府の収支を黒字にする必要性は0%なのです。永久に赤字で何の問題もありません。)
で、今年の「骨太の方針2023」ですが、またとんでもない改悪となっていて、あまりにもひどい内容すぎて、絶望感に打ちひしがれてしまいました。゚(゚´Д`゚)゚。
まともに受け止めたら怒りが沸点を超えすぎるので、それを抑えようとすると気分が悪くなると言う、非常にメンタルヘルスに良くない骨太の方針となっております(ーー;)
▼終身雇用など日本の〝常識〟見直しへ 骨太方針閣議決定(産経新聞)
今回の「骨太の方針2023」で新たに打ち出されている特徴としては、
「労働市場の改革」
となっていて、終身雇用や年功序列、転職や退職金等にメスを入れていくようです。
内容をざっと読みましたが、もうね、本当にひどいものになっておりました。
そこで、今回は上記の産経新聞の記事を取り上げて、1つずつツッコミを入れていくスタイルで行きます。
では、以下よりツッコミスタート。
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『最も力点が置かれたのが、労働市場改革だ。
終身雇用や年功序列など日本型雇用は、成長分野への労働移動を妨げるといった弊害が顕在化。
その結果、世界をリードする新たな企業は誕生せず、賃金も伸び悩むといった現状を生み出している。』
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→「成長分野への労働移動」(成長している業界への転職)ごときで、「世界をリードする新たな企業」を誕生させられるわけがありません。
日本でそういった企業が誕生しなかったのは、「労働市場が流動化」していなかったからではなく、
30年続いている緊縮財政のせいで、需要が著しく停滞し、企業が儲からなくなり、企業が投資もできなくなってしまったからです。
この30年、積極財政を行い、経済を成長させていれば、起業家も儲やすくなり、挑戦する人も増え、ベンチャー企業も生まれやすくなり、企業も投資をしやすくなり、
企業や個人がチャレンジをする母数が圧倒的に増えていたのは間違いなく、そうなれば、結果として「世界をリードする新たな企業」とやらも、生み出させていた可能性があります。
政府が緊縮財政で、国民を苦しめ、国民から富を奪い、国民から消費意欲を奪い、この国を経済が衰退し続けている万年不況の国にしてしまっていることが、「世界をリードするような新たな企業」が生まれない最大の原因なのです。
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『そこで骨太方針では、「人への投資」の抜本強化を掲げ、労働者のリスキリング(学び直し)を後押しする。
従来のリスキリングは主に企業が学びの機会を提供してきたが、労働者が主体的に取り組めるよう「個人への直接支援を拡充する」とした。
労働者にとっては自分の意思で新たな能力を身に付け、仕事も選ぶことができるようになる。』
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→政府が大規模な財政出動をせず、根本的な需要が回復していないデフレの状態で、大増税を繰り返し、「五公五民」という狂った税制を続けたまま、
「労働者の学び直し」
ごときで日本経済が再生するわけがありません。
また、明らかにおかしいのは、
「労働者にとっては自分の意思で新たな能力を身に付け、仕事も選ぶことができるようになる。」
の部分です。いや、
「労働者が自分の意思で新たな能力を身に付ける」
「労働者が自分の意思で新たな仕事を選ぶ」
って、そんなものはとっくの昔から、労働者は自分の意思でできますがな。本気で言ってるんですかと(ーー;)
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『企業間で人材の奪い合いが生じることで、賃金の持続的な引き上げにもつなげたい考え。』
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→なぜ「人材の奪い合い」が「賃金の持続的な引き上げ」につながるのか意味不明。
今は政府の愚策のせいで、労働者の4割が非正規雇用となっています。
年収186万円未満のアンダークラス層は、いまや1200万人超え。
労働者の多くは弱者であり、この弱者を救済することなしに、日本経済が復活する事はあり得ません。
「人材の奪い合い」で「賃金の持続的な引き上げ」なんてものは、あるとしても「様々な企業から取り合いになるような優秀な人材」に限った話です。
そんな優秀な人材が全体の何%かという話。
100歩譲って、そういう優秀な一部の人材が、その他大勢の平均的な人たちをリードするような貢献を企業に行う結果、全国の平均的な賃金が上がる、と考えていて、その考え方を受け入れたとしても、
根本的なデフレ状況を改善することなしに、全国中の企業がその一部の優秀な人材によって収益を上げ、日本経済全体が活性することなどあり得ません。日本経済には、圧倒的に需要が不足しているのです。
この辺がもういかにも経済の現場を肌感覚で理解していない、お勉強だけしてきた頭でっかちの官僚や世襲の政治家たちが、脳内だけで考えた空理空論だと言う印象です。
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『同じ会社に長く勤めるほど退職金の税負担が軽くなる退職所得課税についても見直しを行う。』
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→ 1つの会社に長く勤めて、生涯かけて頑張った人の退職金を増税するというのは、正直狂っていると思います。
この「退職金増税」は、あまりにも頭のおかしい考え方なので、別の記事にもなっていました。
▼ついに「退職金増税」のトンデモ制度改変まで 国民のおカネをわざわざ消す岸田政権、緊縮財政を狙う財務省の〝洗脳〟か(夕刊フジ)
ちなみに、上記の記事を書いた田中秀臣氏の他の記事や動画を何度か見たことがありますが、「正しい財政観」を持っている、非常に稀な言論人の1人です。
(上記の記事の内容も、極めてまともで、全面的に賛同できます)
で、「骨太の方針2023」では「退職金増税」をする理由は、「転職を促進するため」などと言っているのですが、全く意味がわかりません。
「1つの会社に長くいて、生涯勤め上げた」
ということは、その人にはその会社が良くて転職する必要がなかった、ということです。
そういう状況の人を、なぜわざわざ「退職金増税」をして、転職させる必要があるのか。岸田政権は、単に
「何でもいいから、こじつけて増税する理由をデッチ上げたいだけ」
なのが、はっきりとわかります。
当然それは、裏にいる財務省の思惑であるわけですが、国民が生涯かけて汗水たらして、必死に働いて手に入れた退職金に増税するとか、個人的にはやってることが詐欺師並みにクズすぎて、怒りしか湧いてきません。
とにかく、岸田政権のやっている事は、新自由主義極まりなく、
「労働市場の自由化(流動化)」
「競争させる」
こういったことで、経済全体が成長すると本気で思い込んでいるのがよくわかります。(この辺は維新も同じですが)
こんなものでうまくいくと思い込んでいる思考の根底にあるのは、私は「骨太の方針2023」の作成に関わった本人たちが気づいているかどうか知りませんが、間違いなく
「強欲と傲慢の極み」
が根底にあると確信しています。
官僚や世襲のボンボン政治家たちは、自分たちは、民間でお金を稼ぐ苦労をこれっぽっちも全く知りもせず、
利権や天下り先からのいわゆる「公金チューチュースキーム」で、世の中に何の価値提供もすることなく、公金から楽してお金を取る人生を歩んでいる。
にもかかわらず、必死で働いてる民間人に対して
「財政出動で国民を甘やかしてはいかん」
「ゾンビ企業は潰せ!」
「激しく競争するから成長するんだ!」
「自由市場で戦い抜くからイノベーションが生まれるんだ」
とかなんとか、上から目線で偉そうなことを考えてしまう。自分たちがやるべき国を経済成長させる政策をせずに、こんなことを考えているのです(証拠多数)。
私は、この官僚(特に財務官僚)と世襲政治家たち特有のメンタリティを「強欲と傲慢の極み」だと確信しているのですが、あなたはどう思われるでしょうか。
ちなみに、京都大学の藤井聡教授が、岸田総理について、元明石市長の泉氏との対談で
「岸田総理には、政治家として必要な『優しさ』『賢さ』『強さ』の全てが無い」
と断じておられるのですが、個人的には100%同意できます。
▼『泉房穂明石元市長との対談で明らかになった
「岸田文雄のダメさ加減」の正体~政治家に必要な”優しさ/賢さ/強さ”の全てが無い~』
市場経済の中で、必死で価値提供しながら、あるいは必死で自らの価値を高めながら、お金を稼ぐと言う国民の大半が行っている苦労をまるで知らず、
公金だけで生活でき、机上の勉強しかしてこなかった官僚や、庶民の苦労を知らない世襲のボンボン政治家たち(総理大臣も7割が世襲)は、
公金の振り込みで安定して生涯食べていくだけでなく、利権や天下り先のスキームで自分や自分の身内だけは、しっかりおいしい立場を守りぬく。
国民の生活や人生がどれだけ破壊され、国民がどれだけ苦しみ、どれだけ人生に絶望し、どれだけ自○者が増えても、本心では何とも思っていない。
絶大な権力を持ちながら、実は国民を本気で救う気などさらさらない。
余談ですが、岸田政権を支える内閣官房副長官の木原誠二議員に至っては、これだけの国家の非常事態に超要職につきながら、先日の文春砲で愛人と不倫デート三昧が発覚している始末(゚o゚;;
この愚かすぎる連中によって、日本の発展が30年間阻害され、ここから先さらにひどく、国民が人生と命を奪われようとしている
…というのが、今の日本の惨状と言い切って、間違いないと思います。
ね、メンタルヘルスに悪いでしょ?笑 (つД`)
というわけで、先週金曜日に閣議決定した「骨太の方針2023」は、
「労働市場の改革」
という言葉だけは綺麗事を述べていますが、実態は国民生活を破壊するろくでもない代物でしかありません。
これ以上まともに考えるとメンタルに来そうなので、
最近「システマ」という呼称で再注目を集めている鼻呼吸をして、このあと怒りを沈めようと思います(´ー`*)スースー
それではまた。