- 2023-1-25
- 経済の話
こんにちは、中西です。
ある国内で著名な経済評論家の方がいるのですが、前から不思議だったのは、その方が全然経済に関する情報発信をしていなかったことです。
他の情報は書籍も含めたくさん配信されているのに、なぜか本業の経済の情報をほとんど配信していない。
個人的にその方の事はかなり好きなのですが、なぜ経済評論家を名乗っているのに、こんなにも経済の配信が少ないのか。それがよくわかりませんでした。
で、その方(Aさんとします)が、最近クローズドな場で、経済に関する話をされていました。
私としては、国内で著名なAさんのめったにない経済関連の話を学べる機会なので、その内容を興味深く拝見しました。
ところが、終始、何を言っているかわからないのです。
正確に言うと、Aさんが言おうとしている事は分かるのですが、私から見てあまりにも「おかしいこと」を言っていて、何を根拠にそれを言ってるのか、まるでわかりませんでした。
具体的に言うと、Aさんはこんな趣旨のことを言っていました。
—————————————–
「長いデフレがようやく終わろうとしています」
「一気にこのデフレの状況を解消するきっかけになったのがコロナです。」
「物の供給が少しずつ少なくなり、それに対してお金はこれまで余ってきていますから、だんだんとインフレが進むようになりました。」
「このデフレの原因というのは色々ありますが、最も大きな原因の1つは、生産性の異常な継続的な成長です。
特にインターネットを始めとしたデジタル化によって、あらゆるものが人手を介さずに、安く作れるようになったのです」
「とにかく大事なことを何かと言うと、全世界的にもうデフレが終焉してインフレの時代に入ったということを私たちが強く自覚をすることです。」
—————————————–
…非常に長い文章から1部を抜粋したものですが、とにかく私には何を言ってるのかよくわからず、どう考えても、おかしい話をしているわけです。
まず、読んでいて直感的に感じたのが、
「Aさんは、何か根本的に重大な認識違いをしているのでは?」
と言うことでした。
ただ、その「重大な認識違い」が何なのか、わかりません。わからないのですが、読んでいて、尋常じゃない違和感があるわけです。
その違和感の正体を突き止めるために、数回、その長文を読んでみたのですが、何度も読んで、ようやくわかりました。
やはり、Aさんは根本的に重大な認識違いを犯していたのです。
その間違った認識が何か、結論から言いますと、
「デフレとは、物価が下落すること」
だと考えていることです。
Aさんがそう考えていると仮定すれば、この意味がよくわからない文章の、全ての辻褄が合いました。
そう思ってもう一度読んでみると、Aさんが「デフレとは物価が下落すること」だと考えていることがわかる箇所が、何箇所もありました。
間違いなく、Aさんは「デフレとは物価が下落すること」だと考えています。
そして、この認識違いのせいで、日本の現状に対する認識も、大きくずれてしまっているのです。
どういうことかと言うと、デフレというのは、「物価の下落」のことではなく、
「需要が不足すること」
なのです。正確に言うと、国内全体の需要が不足することなので、「総需要の不足」です。
需要というのは言うまでもなく、商品やサービスを購入したいと言う(国民の)欲求のことです。購買意欲・消費意欲ですね。
日本がずっとデフレが続いているのは、この需要が低迷しているのに、供給能力(企業や事業者が商品・サービスを提供する力)は高いまま、
国民の多くがモノを買おうとしない状態が続いている結果、
需要と供給のバランスが大きく崩れてしまっている(=デフレギャップ)
から、「結果的に」販売者側は物の値段を上げられないので、物価が下落しているわけです。
「物価の下落」は、結果的に発生している現象で、デフレの本質は、あくまで「総需要の不足」なのです。
同じようなものじゃないの?と思った人もいるかもしれませんが、この認識を間違えていると、重大な間違いを犯します。どうなるかと言うと、
「物価が上がったから、デフレが終わった!」
と考えてしまうことになるのです。だって、その人の頭の中では「デフレ=物価の下落」なのですから。
残念ながら、Aさんの頭の中では、
「今は物価が上がっているからインフレだ!
つまり、長いデフレがとうとう終わった!」
となっているのです。
しかし、この認識は完全に間違っています。
理由は簡単で、物の値段が上がっていても(インフレになっていても)、国民の多くが消費意欲が低いままなら、
「総需要の不足」=デフレの状況は何も変わっていないからです。
実際、最近の内閣府のデータを見ても、需給ギャップ(需要と供給のバランスの崩れ)は現在も全く改善していません。
まぁぶっちゃけ、そんなデータなんか見なくても、普通の庶民感覚でわかるでしょって話です。
消費税10%がいまだに減税されず、岸田内閣は増税につぐ増税をここぞとばかりにやってきている。
食べ物や日用品の物価が上昇し、年金も支払い額は増えているのに支給額を減らし、老後不安が増すばかり。
この状況で、30年続いた消費意欲の低迷から、日本が脱却していると思う方がどうかしています。
あくまで肌感覚のレベルの話でも、十分に「デフレから脱却したなどありえない」事はわかるはずです。で、実際にデータを見てもその通り。
今起こっているインフレは、国民の消費意欲が高まり、需要が供給を上回り、需要と供給のバランスが健全に崩れたことで、物の値段が上がっていく「健全なインフレ」ではありません。
単に、資源価格が世界的に上がったことによる、「コストプッシュ型インフレ」と呼ばれるものです。
需要が高まったことで物価が上がる「健全なインフレ」(デマンドプル型インフレといいます)とは違うので、当然ながら、
「インフレになっているのに、デフレのまま」
と言う状況は、普通にあり得るわけです。まさに今の日本がそうです。
ところが「デフレとは物価の下落」と認識していると、
「物価が上がった」という現象だけを見て、「デフレがついに終わった!」なんて考えてしまう
わけです。゚(゚´Д`゚)゚。
これって、大学受験とか受験勉強でも同じですけど、基本的な部分で認識を間違えていると、応用問題も全く解けないんですよね。
どうやら、国内トップクラスで著名な経済評論家のAさんは「デフレの定義」すらも正しく理解されていないようでした。
それに気づいてAさんの文章をもう一度読んでみたら、こんな箇所を見つけました。
「日本の財政赤字が問題になっていますが、この財政赤字の最大の原因というのは実はデフレです。」
…あちゃー、「財政赤字が問題」なんて言っちゃってる。。
これで完全に確定(T ^ T) 今までお疲れさまでした!(。´Д⊂) アザシタ‐
Aさんの発言の後半部分は意味不明ですが、Aさんの脳内を想像するに
「デフレで物の値段が下がり、税収が減ったから、日本は財政赤字になっている。だから、デフレが財政赤字の最大の原因」
と考えていると想定すれば、こういう発言になるのは一応理解できますね…(゚o゚;;
このメルマガの読者さんには、もうこの部分の解説はいらないかと思います。(最近登録した人を除き)
ポイントだけ言いますと、政府の財政赤字=民間(国民)の黒字であり、政府がこれまで発行してきた赤字国債と言うのは、
「政府がこれまで国民にお金を出してきた累計の額」
に過ぎないからです。150年分ぐらいあるわけで、そりゃ総額は1000兆円超えるわけですが、
単なる政府が過去に発行したお金の総額なので、その数字がどんなに大きくても何の問題もありません。
2023年の現在に、財務省の飼い犬の御用学者たちのように「意図的に嘘をついている」のではなく、
まだ本気でこんな「財政赤字が問題」なんてことを言っているということは(Aさんは嘘をついてプロパガンダを流す人では無いですし、そもそも財務省との利害関係は0)、
本質論で言うと、シンプルにAさんは日本の経済問題に興味がないんだろうな…と思いました。
前からなんとなくそんな気がしていたのですが、今回の文章を見て、私の中でははっきり確信できました。
シンプルに興味が全然ない、もしくは他の分野の情報発信に興味があるんだろうなと。
いずれにしろ、日本トップクラスで著名な経済評論家でも、このレベルだと言うことです。
この人のことは大好きなのでディスりたくは無いですし、今回はクローズドに近い文章なので名前は伏せましたが、ネットに公開されている記事などであれば、実名で批判していたかと思います(影響力が大きすぎるので)。
そういえば、本日こんなニュースがありましたね。
▼政府、財政収支「26年度に黒字見通し」 前回試算から据え置き(毎日新聞)
相変わらず、岸田総理は「財政健全化」を目指して、政府が黒字にならなければならない(プライマリーバランスの黒字化目標)などと、
正真正銘、100%完全に間違ったことを言っています。
総理大臣が、完璧に財務省の官僚たちに騙されているわけです。
何度も言いますが、「財政健全化」(政府の黒字化)は、税収(を予算として審査・配分する権限)が絶大な権力・利権の源になっている財務官僚の連中にとっては、絶対的に必要な目標なのです。
本当は「国債の大規模発行」で、何の問題もなく、日本のほぼすべての問題が解決する客観的事実がばれてしまうと、財務官僚は存在意義が一切なくなります。(そもそも彼らの存在意義はゼロですが)
その状況を阻止するために、全くありもしない、日本が財政赤字で破綻すると言う「財政破綻論」と言うプロパガンダを、1995年の武村正義大蔵大臣の財政危機宣言から、30年近くも撒き散らしてきたのです。
総理大臣なら、もうホントいい加減に、自分が騙されていることに気づいて欲しいものです。
というわけで、国内トップクラスで著名な経済評論家さえ、「財政赤字は悪いこと」などという超恥ずかしいことを、2023年にもなってまだ発言していて、
国内の主流派経済学者たちは、ほぼ全員が同じレベルで財政についての認識を間違い、
トップの総理大臣は、
「財政健全化」
という一見もっともらしく聞こえる、完全に間違った、財務官僚たちの強欲を満たすだけのプロパガンダに、この期に及んでまだ気づけない。
(財政の健全化=政府の黒字化=(増税などによる)国民の赤字化=国民の貧困化)
そりゃ世界中の先進国で、日本だけが、30年間も衰退しまくるわけでございます。
それではまた。