- 2024-9-12
- 幸福論
こんにちは、中西です。
前々回、人間が求めてやまない「幸せ」についての考察として、
【 人は「他人の幸せ」のために行動すると幸せになれる…のではないか? 】
というテーマで、近年は科学的にも研究が進んでいる話をしました。
1つの事例として、2021年にニッセイ基礎研究所が発表したレポート、
「他人の幸せの為に行動すると、幸せになれるのか?―利他的行動の幸福度への影響の実験による検証―」
https://www.nli-research.co.jp/files/topics/67315_ext_18_0.pdf?site=nli
にて、
「利他的行動で幸福になる可能性について、因果関係を示した最も有名な研究」
として掲載された研究をご紹介しました。
ポイントだけ簡単におさらいしますと、前々回紹介した研究の結果は以下の通り。
①自分のためにお金を使った人より、他人のためにお金を使った人の方が幸福感が高まった。
②他人のために使ったお金が5ドル(約750円)でも20ドル(約3000円)でも、結果は同じだった。(つまり金額の多寡は関係ない)
③人々は他人のためにお金を使うことによって得られる幸福感を、正しく予測できていない。
・・・こんな感じで「お金を使う」という行為においては、
「自分のためにお金を使う」よりも、「他人のためにお金を使う」方が幸福感が高まる、という話でした。
「お金を使う」というのはあくまで一つの具体例で、この研究(レポート)の主題は
【 他人の幸せのために行動すると、人は幸せになれるのか? 】
ということです。
そして少なくとも「お金を使う」という行動においては、この仮説が正しい可能性が示唆されました。
このレポートでは、もう1つ、興味深い実験が掲載されています。
先ほどのお金を使う研究は北米地域で行われたものでしたが、これは世界的に見れば経済的に豊かな地域で行われた実験だったと言えます。
そこでそれ以外の(つまり豊かではなく貧困度合の高い)地域でも同じような傾向が見られるかどうかを検証した実験があります。
この実験では経済的な状況によって違いが生じるかを確認するため、カナダと南アフリカでも同様の実験が行われました。
どちらの地域も、前回の実験と同様にまずランダムに2つのグループに分けられ、それぞれ以下のような機会が与えられました。
【Aグループ】
「自分自身のため」に、少しお得なお菓子等の入った袋を購入する機会が与えられる。
【Bグループ】
地元の病院にいる「病気の子どもたちのため」に、同様の袋を購入する機会が与えられる。
この実験の結果、カナダでも南アフリカでも同じように、
「病気の子供たちのため」
にお菓子等が入った袋を購入したBグループの方が、
「自分のため」
に購入したAグループよりも幸福な気分になったことが確認されました。
ちなみに、南アフリカでは20%以上の参加者が、過去1年間に
「自分か家族の食糧を得るためのお金がない」
という経験をしていたとのこと。
つまり南アフリカの参加者は経済的に非常に貧しい人も多かったわけですが、
そのような経済的に貧しい人々であっても、経済的に豊かな人々と全く同じように、
【 利他的な行動によって幸福度がアップする 】
ということが確認できたわけです。
ようは「お金の有無」は関係なかったわけですね。そうであるなら、
「他人のために行動をすると幸せになる」
というのは、人間に元々備わっている本質的な性質である可能性が高い・・・と言えそうです。
また、自分自身の幸福を追求する場合、
「他人のために行動をする」
という要素を、何らかの形で意識して取り入れておくのがポイントになりそうです。
逆に言うと、このことを理解して意識した生き方をしていないと、
「何のために生きているのかよくわからなくなる(。´Д⊂)」
という状況に陥るリスクも高まりそうです。
私の知る限り、このような生きる目的の負のループに陥っている人は、
今回紹介したような「利他行動」の視点が欠けている人が少なくない気がしますし、
逆に、いつも明るく元気で、エネルギッシュに生きている人たちは、
この視点の有無に関わらず、実際に誰かのための行動を日々行っている(orそういう日々を目指して頑張っている)
という人が非常に多いように感じます。
To be continued