- 2023-4-10
- 経済の話
こんにちは、中西です。
このメルマガは、水曜日と日曜日に不定期で経済ネタを配信しているのですが、
本日ちょっと大きなニュースがあったので、今回は水曜日の分を前倒しで笑
トップニュースとして報道されているので、ご存知の方も多いと思いますが、日本銀行の10年ぶりの新総裁に植田和男氏が就任し、本日記者会見を行いました。
▼日銀・植田新総裁が初の会見 「物価安定達成というミッションの総仕上げ」に尽力すると表明(日テレNEWS)
https://news.yahoo.co.jp/articles/c111ff326d422054867c03e4cfb7533e33850940
この件で、「何が問題の本質か」を理解できている人が、経済評論家も含めて皆無に近いと感じたので、最も大事な部分の話だけしたいと思います。
(逆に言うと、今回の話を理解することで、世の中の99.9%以上の国民、さらに経済評論家や経済学者、政治家ですらまともに理解できていないことを、理解できることになりますヽ(´▽`)/ )
とにかく、ニュースの報道を見ても、本件の記事を読んでも、新総裁の記者会見を聞いても、難しい単語と話がごちゃごちゃしていて、日銀の話なんて、何が何だかわからない人が大半だと思います。
実際のところ、報道しているマスコミの経済記者たちも、ニュースを読み上げているアナウンサーも、問題の本質が何かを理解できてないまま報道していて、
さらに上記の記事で「オーサー」としてコメント欄の上位に表示される権限を与えられた経済の専門家たちすらも、この国で起こっている問題の本質と、この日銀のニュースのつながりを理解できてません。(このあと解説しますが、彼らの見解を読めばはっきりとわかります)
当然コメント欄に書き込んでいる一般の人たちは言うまでもなく。
みんな見事に理解できていないことがあるんですよ。本当に深刻な事態だなと。
なぜ日本は30年も経済成長ができなかったか?
その大問題の一つが、この日銀のニュースに隠されています。
でも誰もそれを語っていない。語れない。
まず、基本的な話として、経済の政策には
「金融政策」と「財政政策」
の2種類があるわけです。
前者は「バーチャル」の政策、後者は「リアル」の政策。そう理解しても、そんなに間違ってません。
ざっくり言うと、前者の「金融政策」は金利とか国債とか為替とか株価に影響を与える日銀が行う政策で、
誤解を恐れず言うと、我々の生きているリアルの実体経済とは別の「バーチャルな空間」における政策といえます。
一方で、後者の「財政政策」は、政府が行うリアルの経済にモロに影響を与える政策です。
増税や減税もそうですし、3年前に1人10万円が振り込まれた特別定額給付金のような支出をして需要を拡大したり、道路や橋などのインフラを整える公共事業の拡大・縮小などなど、
平たく言うと、景気対策のために政府がリアルの実体経済にアプローチして行う政策です。
で、日銀が担当してるのは、金融政策の方なのですが、安倍晋三元首相が行っていた10年ほど前の「アベノミクス」で、植田新総裁の前の黒田元総裁が行った
「異次元の金融緩和」
という政策がありました。
これは最初の一時期だけ盛り上がって、株価が上がったりしたのですが、結果的には全くと言っていいほど、景気を良くしませんでした。(投資家と大企業が潤っただけ)
そもそも、これはどういう金融政策だったかと言うと、
「日銀がめっちゃ(異次元なレベルで)お金を出せば、景気が良くなるはず!」
という主旨の政策だったんですね。
安倍元首相も、黒田総裁も、国民もみんなそれを信じてたわけ。
ところが、どれだけ異次元の大規模の金融緩和をして日銀がお金をジャブジャブ出しても、景気は一向に良くなりませんでした。
なぜか?
これね、真相を知ったら、あまりにもバカバカしくて涙が出てくるんですけどね(T ^ T)
なぜ異次元のレベルで日銀が大規模にお金を出しても、景気が全く良くならなかったかと言うと、
【 「日銀当座預金」という、一般の国民にも、企業にも全く関係ないバーチャルの口座に、お金がいっぱい溜まっただけだったから 】
です。どういうことか?
「日銀当座預金」
というのは、民間の銀行(三井住友銀行とかPayPay銀行とかびわ湖銀行とかトマト銀行とか)が日本銀行に持っている口座(に入っているお金)のことです。
われわれ国民が自分の銀行口座を銀行に持っているように、銀行自身も自分の銀行口座を持っているわけです。
ただし、銀行自身がどこかの銀行に口座を持つわけにはいかないので、日本銀行に口座を作ってお金を持っているのです。
その日銀当座預金の口座で、銀行(金融機関)同士のお金のやりとりや、日銀と銀行のお金のやりとり、政府と銀行のお金のやりとりなどが行われます。(よって政府も日銀当座預金を持っている)
だから、日本銀行は「銀行の銀行」「政府の銀行」とも呼ばれているわけです。
問題は、その日銀当座預金は、銀行や政府が日銀に持っている口座のため、
【 一般の国民や企業は、日銀当座預金なんかには、全くアプローチできない 】
わけです。まぁ当たり前なんですが。
ところが、驚くべきことに、「異次元の金融緩和」を始めとする日本の金融政策では、
「民間の銀行の日銀当座預金にお金をたくさん入れれば、銀行が(たくさんお金が入ったから)国民や企業にお金をいっぱい貸し出して、景気が良くなるはず!」
と考えて、アベノミクス以降の金融政策が実行されていたわけですね。
ところが、なぜか景気は全く良くならなかった。
なぜなら、
【 民間の銀行の日銀当座預金にお金がいっぱいいっぱい異次元なレベルで溜まっても、
一般の国民や企業からしたら、そんなものは何の関係もない話で、それだけで「じゃあ、銀行からお金を借りよう!」とは思わないから 】
です。意味わかりますか?
わかったら「当たり前やろ(゚o゚;;」としか思えないと思います。
ちなみに、金融政策で、リアルの実体経済にお金が流れていくためには、基本的に
「銀行がお金を貸し出す(個人や企業に)」
という流れしかありません。
でもね、超絶に当たり前の話なんですけれども、
「景気が良くなっていないなら、企業や国民は銀行からお金を借りようとは思わない」
わけです。消費者金融じゃないんですから。
企業は景気が良くなってきて、これから儲かる見込みがしっかり立っている時じゃないと、わざわざ銀行から借金をして、設備や人材などに投資をするわけがありません。
こんなの商売を少しでもやったことのある人なら誰でもわかる話。
儲かる見込みが全くないのに、お金を借りて投資するなんて怖くてできるわけがありません。
つまり、「異次元の金融緩和」で民間の銀行の日銀当座預金にお金が大量に入ってきても、
そもそも、リアルの経済の景気が良くなっていなければ、企業も、国民も、まともに銀行からお金を借りようとは思えないわけです。
(もちろん借りる人もいますが、「異次元の金融緩和」で銀行からお金を借りる人が激増するかどうかということ)
結果、どうなったかと言うと
【 銀行の日銀当座預金という「一般人は誰も触れられないバーチャル空間」に大量のお金があり余り、
そのバーチャル空間の異次元レベルのお金から、一般の国民・企業は全く恩恵を受けられなかったため、いつまでたっても景気が回復しなかった 】
これが「異次元の金融緩和」で全く景気が回復しなかった真相なのです(゚o゚;;
ね、バカバカしすぎて涙が出ませんかね?
しかも驚くべきことに、今になってもなお、日銀を始め、政府も政治家も、経済の専門家たちも、
「異次元の金融緩和で、景気が回復しなかった理由がよくわからん。なんでなの?」
という認識でいるのです(゚o゚;;
確かに、この政策はアメリカとかなら効果があるわけですよ。
なぜなら、アメリカ人は投資をしている人が多く、株を持っている人も多いからです。
そうすると、金融緩和をしてバーチャルで株価が上がると、多くの国民の資産が増えるため、国民がリアルの実体経済にお金を使うようになります。
だから、アメリカなら金融政策でも景気は回復しやすいわけです。
ところが、日本では株などを持っている人は少数派なので、株価が上がっても多くの国民は恩恵を受けず、実体経済は冷めきったまま。
こんな簡単なことを、総理大臣も、日銀総裁も、経済学者も、経済評論家も、大半の政治家も、理解できなかったのです。(今でも理解していない)
しかも、植田新総裁は、私が調べたところ、数年前の記事で「財政破綻論」を展開していたので、少なくとも経済学者としては、完全に間違った主流派経済学(もしくは財務省の飼い犬)タイプの学者でした。
とは言え、日本銀行は政府の実態上の「子会社」なので、政府がしっかりしていれば、そういう人間が日銀総裁になっても、大勢には影響しません。
(「日銀の独立性」というものがありますが、それは「手段」の話なので。基本は当然政府の方針に従います。)
ところが、政府はご存知の通り、岸田総理も、鈴木財務大臣も、絶望的なまでの経済オンチで、財務省の官僚たちに完璧に騙されています。
(鈴木財務大臣の国会答弁なども時々見るのですが、目も当てられないレベルで、彼は財政を全く何も理解しておらず、官僚のペーパーを読み上げることしかできません。財務省の完全なる操り人形になっています。この日本の非常事態に(つД`))
これほどまでの惨状なので、植田和男氏が10年ぶりの新総裁になろうとも、日本経済が良くなることなどあろうはずがありません。
というわけで、私たち日本人は、権力者たちの恐るべき無知と判断能力の無さによって、
生活と人生を激しく破壊されていると言う、
ハッピーエンドのお話でしたヽ(´▽`)/
それではまた。