- 2023-2-15
- 経済の話
こんにちは、中西です。
まず、最初に言っておきますと、今回は「保存版」になると思います。
このメルマガでは「正しい財政観」について、いろいろと解説してきましたが、今回の話は、あまりしっかり解説してなかったと思います(少しは触れてましたが)。
日本の財政・金融政策が、なぜずっとうまく行かず、なぜ世界中で日本だけが衰退しているのか、今回はその
「失敗の根本的な構造」
が理解できるので、目から鱗が落ちる人もそこそこいるかもしれません。(自分で言う)
題材は、今話題の「日銀の新総裁」の話。
この話題を通して、日本の「根本的な失敗の構造」に気づいてもらえればと思います。
ちなみに、今回解説する話は、日銀の新総裁のニュースと「思いっきり関係している」にもかかわらず、どのメディアも、どの専門家も、全くまともに報道・解説していません。
仕方ないので、ど素人の私が解説します。
本題へ。
連日ニュースで話題になっていますが、日本銀行の新総裁に、戦後初の経済学者となる植田和男氏が就任することが決まりました。
この件の「非常に重要なポイント」がいくつかあるのですが、上記の通り、メディアも専門家も全然まともに解説しません。
そこで、前回の日曜日の経済ネタの回に、その一つである
「植田和男氏が経済学者として評価できる人物なのか」
について解説しました。結論から言うと植田和男氏は、
「筋金入りの財政破綻論者」
だったわけです。
前回紹介した通り、日経新聞の2年前の記事(物的証拠)が残っていたので、ここはまず確定。
また、彼は今の日本で起こる確率は0%の「ハイパーインフレが起こるリスク」を以前から煽り続けていました。
そこで彼は「嘘つき」か「バカ」なのか、どちらかという検証も前回実施。
100%の確率で「どちらか」で間違いないのですが、彼は一体どっちのタイプなのか。
その答えと根拠は前回お話しした通り。(まだ読んでなかった方は、日曜のメルマガをよかったら確認しておいてください。ちなみに、「日本でハイパーインフレが絶対に起こらない理由」も簡単に解説しました)
結論だけ言うと、彼は昨年ノーベル経済学賞を受賞したベン・バーナンキと「兄弟弟子」だったため、
「財政破綻論やハイパーインフレが間違っていること」
など理解しているに決まっているので、「嘘つき」側の学者である可能性が非常に高いです。
ここまでが前回の復習。
前回の話は、「経済学者として大丈夫なの?」と言う植田氏の人物評みたいなものでしたが、今回は、さらに「超重要なポイント」になります。
なので、以下の話は、(ご存じなかった方は)よく読んで理解してほしいと思いますm(_ _)m
それは何かといいますと、彼がやろうとしている
「金融政策」
の話になります。
結論から言うと、これについての「誤解」が、日本がデフレから脱却できずに貧困化している原因なのです。
なのにもうね、どの報道を見ても、ことごとくポイントがずれているんです。
なぜ、これほどまでにズレた報道ばかりなのか考えてみたのですが、少し考えたら分かりました。
本当にゾッとする話なのですが、要はですね、
マスコミの経済記者はもちろん、解説してる経済の専門家の方たちの大半も、コメント欄を見ても難しいことを言ってる一般人の大半がそうなのですが、
【 安倍晋三元首相がアベノミクスで行った
「異次元の金融緩和」
が、なぜ失敗に終わったのか 】
と言うことを、「全く」と言っていいほど、根本的に理解できていないんです。
みんながみんな、基本的なことを「根本から」しっかり理解していないから、何が何だか分からなくなっていて、報道も小難しく聞こえてしまう。
断言できますが、報道しているメディアの人たちも、自分たちが何を言っているのか、まともにわかっていないはずです。
(財務省から届いた資料を、そのまま記事にしているだけのメディアも多いので)
そりゃ聞いてるほうは小難しくて意味がわからなくなるはずですよ。だって伝えている側が、よくわかっていないんだから(゚o゚;;
今回の日銀の新総裁の報道を見ていて、私にはそれがはっきり解りました。
なので、「専門家も含めてみんなが理解していないポイント」だけ、ピックアップして解説することにします。
(「異次元の金融緩和」がなぜ失敗しているのか、人に解説できるレベルでわかっている方は、以下は読まなくて大丈夫です。今回はその話なので)
どの報道も、小難しく説明してる割には、一体何を言ってるのかさっぱりわからない。例えばこれも。
▼残った大量の日本国債…“アベノミクス”判断どうなる? 植田和男氏の日銀総裁人事案提出 難題抱え「誠心誠意頑張る」(TBS NEWS DIG Powered by JNN)
https://news.yahoo.co.jp/articles/fb41228912219dad37e6102457316d3c7badea0e
これも↓小難しく書いているけど、何がポイントか、まるでわからない。
▼与野党、アベノミクス行方注視 岸田首相、路線「総括」課題に(時事通信)
https://news.yahoo.co.jp/articles/ae40399782c9ca23f85289121dfbe942259f26ef
報道で取り上げられているのは、日銀の新総裁である植田和男氏が、
「(黒田総裁がアベノミクスから行っている)異次元の金融緩和政策を、引き続き継続するかどうか」
と言う点で、ここに注目が集まっています。これで株価まで動いてますからね。
が、そもそも
「なぜこれが失敗したのか(デフレから脱却できなかったのか)」
をわかっていなければ、植田氏が金融緩和政策を継続したところで意味がありません。
ちなみに、アベノミクスで行われた「異次元の金融緩和」と言うのは、
「2年以内に物価上昇率(インフレ率) 2%を目指す」
と言う目標だったのですが、この「異次元の金融緩和」(=日本銀行による国債の大量買取り)を行っても、インフレ率は全く上昇しませんでした。
一部の大企業や投資家は儲かりましたが、景気は全く回復せず、インフレ率は上がらず、日本はデフレのままでした。
つまり、アベノミクスの「異次元の金融緩和」の政策は失敗に終わったのです。
なんで?
問題は、なぜこれが失敗に終わったかを、本当にメディアも、経済の専門家も、経済学者も含めて、誰もまともに説明できないのです。
でも、答えは簡単です。
端的に言うと、
「『異次元の金融緩和』をしても、国民には、お金が全く回ってこなかったから」
です。だからデフレのままで、景気は回復せず、インフレ率も上がらなかった。ただそれだけ。
なのですが、問題は
なぜ「国民にお金が回ってこなかった」のか。
また、なぜ「国民にお金が回って行かない」ことを、総理大臣も、日銀のトップも、経済の専門家もわからなかったのか、です。
その答えをひもとくキーワードがあります。それは、
「日銀当座預金」
です。これが、今回の謎を紐とくカギ。
「日銀当座預金」は、わりと有名な用語ではありますが、どういうものか理解している人があまりいません。
簡単に言うと、「民間銀行の口座」です。
私たち国民が「自分自身の銀行口座」を持っているように、三菱UFJ銀行とかの民間銀行も「銀行自身の口座」があるわけです。
ただ、民間銀行は別の民間銀行に口座を持つことができないので、中央銀行である日本銀行に「銀行自身の口座」を作るわけです。それが「日銀当座預金」。ポイントは
「日銀当座預金には、一般の国民も企業も、全く手をつけることができない」
ということです。民間銀行(と政府)しか作れない口座だからですね。
日銀当座預金は、一般人には絶対手の届かないところにある、いわば雲の上の存在。したがって
【 日銀当座預金にどれだけお金が増えても、それだけでは、民間(国民)にはお金が一切回ってこないため、経済は良くならない 】
と言うことです。
本当に信じられない話ですが、このことを総理大臣も、日銀総裁さえも、理解していなかったのです(゚o゚;;
彼らは、なんと、日銀当座預金にお金が増えれば、景気が良くなると思い込んでいたのです。
日銀当座預金のお金が増えれば、「お金が増えた民間銀行が、企業や国民にお金を貸し出す」から、景気が良くなるだろう、と考えたわけです。
ところが、全くそうはならなかった。
理由は簡単で、日銀当座預金にお金がいっぱい増えても、景気が良くならなければ、企業も国民も、「銀行からお金を借りよう!」とは思わないからです。
企業や国民が銀行からお金を借りなければ、民間にお金が回っていかないので、景気は良くなりません。
つまり日銀当座預金に大量に溜まっているお金は、誰にも使われずに、バーチャルなデジタル空間に大量に残っているだけ。
「異次元の金融緩和」
というのは、政府が発行した国債を、買って持っている民間銀行から、今度は日本銀行が、その民間銀行の国債を買いまくることです。
すると、どうなるかと言うと、
「民間銀行の日銀当座預金に、お金がたくさん増える」
…と言うことになるわけですね。
繰り返しますが、民間銀行が政府から買い取って持っていた国債を、日本銀行が大量に買い取ってくれたから、「民間銀行の日銀当座預金」にお金が増えるわけです。
日本銀行が買ってくれたわけですから、日本銀行は民間銀行に(買い取った国債の金額分の)お金を払うわけですよ。
つまり、日本銀行が国債を買い取ってお金を支払ってくれたので、「民間銀行の日銀当座預金」にお金がめっちゃ振り込まれて、民間銀行のお金が超絶に増えるわけですヽ(´▽`)/
「めっちゃ」「超絶」にお金が増えるから、「異次元」と名付けたわけです。
が、そこ(日銀当座預金)にいっぱいお金が増えても、企業も国民もそこには一切手をつけられないので、それだけでは国民の誰も得をしません。。。
デフレは「物価の下落」ではなく「総需要の不足」と言う話を少し前にしましたが、
国民の需要(消費意欲)が不足していたら、企業は儲かるめどが立たないので、銀行からお金を借りるわけがありません。
給料が上がらないので、国民も(ローン等で)お金を借りるわけがありません。
企業や国民にお金を借りてもらうためには、この(異次元の)「金融政策」とは別に、その前の段階で
「財政政策」
(=減税+政府からの財政出動≒給付金や道路・橋・水道などのインフラ投資など。この財政出動でも国民にお金が回る)
をしっかりやり、
まずは国民のほうにお金をたくさん増やして、国民の需要(消費意欲)を高めた上でないと、
日銀当座預金にだけ、お金がどれだけジャブジャブ増えても、企業や国民がお金を借りる気にならないので、民間銀行は貸し出しが増えず、(その金融政策だけでは)民間にはお金が回っていかない。
なのに、政府は財政出動をまるでやらないで、「異次元の金融緩和だけ」やってきた。
当然、国民には全然お金が回ってこない。
見せかけの株価だけが上がり、一部の投資家や大企業だけが、一時的に儲かった。
これが「異次元の金融緩和」で、全く景気が良くならなかった根本的な原因です。
本当に信じられない話ですが、経済の専門家や政治家、特に総理大臣や日銀総裁までが、こんな簡単なこともわからなかったのです。というか、まだわかっていません。
なんと経済学者もわかっていません。主流派経済学というのは、「中央銀行」と言う概念をすっ飛ばして作られた学問だからです。完全に現実無視の学問(゚o゚;;
国のトップや政治家や専門家たちが
「うーん、『異次元の金融緩和』をしているのに、なんで景気が回復しないんだろう?
でも、もうちょい続けたほうがいいんじゃね?」
とかなんとか言ってる(゚o゚;;オイオイ
財政政策のトップや専門家たちが、こんな単純な理屈もわからないせいで、我々日本人は、いまだに貧困で苦しんでいるのです。
アベノミクスなんて、10年も前の話ですからね。
10年も経っているのに、まだこのことに気づいていないメディア・政治家・専門家だらけの国。
そのせいで、各マスコミの日銀の新総裁の報道も、小難しいわりに何を言っているのかよくわからず、何がポイントかもさっぱりわからない。
報道している側も、報道を見ている側も、何が何だかわからない状態。
それが原因で、国民の大半が貧困化し、結婚できない人が増えて、少子化が深刻化し、老後不安や未来に絶望し、経済苦で大勢の人が自ら命を絶っている。
はっきり言って、地獄絵図でございます(つД`)
日本銀行の新総裁・植田和男氏に関する報道は、これほどまでに深刻で重大な問題をはらんでいるのです。
それではまた。