- 2024-12-16
- スマホの話
こんにちは、中西です。
「スマホを長時間利用していると成績が下がる」
という話を聞いたことがある人も多いと思います。
実際、そのような傾向は複数の研究で認められています。
スマホを長時間使う子どもたちの成績低下の要因として、
「勉強をする時間が短くなる」
「睡眠時間が短くなって寝不足になる」
といった理由が一般的に挙げられています。
しかし、長時間スマホを利用する子どもたちについて、勉強時間や睡眠時間の影響を考慮した分析によると、驚くべき事実が明らかとなりました。
東北大学加齢医学研究所は、宮城県の仙台市教育委員会と共同で、
2010年から毎年、約7万人の仙台市立小中学生を対象に大規模な調査を実施しています。
その調査の結果、
【 スマホの利用自体が脳に悪影響を与え、子どもたちの学力を直接的に低下させる 】
可能性があることが分かりました。
※参考:本記事下部に記載
この大規模調査の結果から、平日のスマホ利用時間ごとに、子どもたちのテストの成績や偏差値がどのように変化するかを示すグラフが作成されています。
このグラフには、テストの成績とともに、勉強時間や睡眠時間のデータも含まれています。
データによると、スマホの使用時間が1時間未満の場合、毎日長時間勉強し、かつ長時間睡眠をとっている子どもほど成績が良いことが分かりました。
ところが、スマホの使用時間が毎日1–2時間になると、同じ勉強時間でも成績が悪い子どもが増える傾向が見られました。
さらに、スマホの使用時間が2–3時間になると、その割合が大幅に増加し、
勉強時間や睡眠時間がスマホ利用時間1時間未満の子どもたちと全く同じであっても、成績が悪い子どもが多いことが分かりました。
驚くべきことに、
【 スマホの使用時間が3時間以上になると、勉強時間や睡眠時間がどれだけ増えても、偏差値50以上の子どもが全くいない 】
という結果が出ました。
簡単に言うと、スマホの使用時間が長くなるほど偏差値50以上の成績を持つ子どもたちが減少し、
3時間以上の場合は偏差値50以上の子どもが誰もいなくなるということです。
これはつまり、スマホを1日3時間以上使用している子どもたちは、どれだけ勉強時間を増やし、睡眠を十分に取ったとしても、成績が低いままであるということになります。
この結果は、スマホを長時間利用することによって、勉強時間や睡眠時間が減少するからではなく、
【 スマホ利用そのものが学力に悪影響を与えている可能性がある 】
ことを示しています。
そこで東北大学加齢医学研究所は、約5–18歳の子どもたち223名の脳をMRIで計測し、3年間の脳の発達とネットの使用状況との関係を調べる調査を行いました。
その結果、
【 ネットを頻繁に使用していた子どもたちほど、3年間の言語能力の発達が小さく、脳の広範囲における発達にも悪影響がある 】
ことが判明しました。
特に、脳の重要な部位である前頭前野や記憶・学習に関わる領域、感情に関係する部分などで発達の遅れが見られました。
これらの領域は私たちが生きていく上で極めて重要な機能を担っています。
そのため、ネットを毎日長時間利用する子どもたちの場合、3年間で脳の発達がほとんど見られなかったという結果になったのです。
つまり、脳の広範囲で重要な部分の発達が止まっているため、スマホ利用による悪影響を補うために勉強時間を増やしたり、睡眠を十分に取ることは効果がないということです。
このMRIの結果は、スマホを長時間利用する子どもたちほど、勉強を長時間しても睡眠を十分に取っても成績が悪かったという大規模調査の結果と一致しています。
ただし、この結果は脳の発達段階にある子どもたちを対象としたものであり、大人にも同じように当てはまるとは限りません。
また、スマホの利用内容も子どもと大人では異なる可能性があります。
例えば、子どもはゲームや動画といった受動的な利用が中心かもしれませんが、大人は勉強や仕事、生活管理のためにアプリを活用するなど、能動的な利用が多い場合もあるでしょう。
そのため、大人が長時間スマホを利用した場合も同様に脳に悪影響があるとは言い切れません。
いずれにせよ、少なくとも成長期の子どもにとって、スマホを毎日3時間以上利用することは、
単に「勉強時間や睡眠時間が削られる」だけではなく、「脳そのものに悪影響を及ぼす」可能性があることが分かりました。
そのため、(特に学生の間は)学業成績を向上させたい場合、スマホとの距離を取り、1日の利用時間をできるだけ短くすることをお勧めします。
※参考
榊浩平(著)川島隆太(監修)『スマホはどこまで脳を壊すか』(朝日新聞出版)