AIと日本人の働き方に関するOECDレポート(研究結果)


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こんにちは、中西です。

11月28日に、OECDがAIと日本の労働市場についての状況を分析したレポートを発表していました。

PDFで200ページ以上にもなるレポートで、内容は以前紹介した「AI 2027」のレポートと比べると、あまり面白くないものでした。

ただ、日本におけるAIの活用について重要なポイントも含んでいたので、私なりの解釈で特に重要だと思われるポイントなどをご紹介したいと思います。

ちなみに「AI 2027」のレポートと比べてあまり面白くなかった理由は、「AI 2027」はハーバード大学の研究者やAIの起業家など、AIのトップクラスの専門家たちが今後2027年末までに起こることを世界的なスケールで予測したものだったからです。

恐ろしい話もかなりあったのですが、それも含めてワクワクドキドキする物語性のような部分があったんですね。

ところが今回のOECDのレポートは、作成した組織が硬いというのと、スケールが「日本の労働市場」の話というのと、その日本の労働市場の状況が個人的には全然面白くなかったので、

面白いか面白くないかで言うと大して面白くない話だった、というのが正直なところです。あくまで私の主観ですが。

ただ、今後企業や組織で働く労働者がAIをその組織でどう活用していくか、という観点では極めて重要なポイントもかなり含まれていました。

このテーマに興味がある方は、レポートの原文の方も、よかったら確認してみてください。

 

※参考:Artificial Intelligence and the Labour Market in Japan
https://www.oecd.org/en/publications/artificial-intelligence-and-the-labour-market-in-japan_b825563e-en.html

 

今回は、あくまで私の感想と、特に重要だと思われる部分だけご紹介します。

まず、このOECDのレポートの作成の目的としては、AIが日本の労働市場にどんな影響を与えるかを、国際的な比較を通じて分析するというものでした。

また、日本の政策の担当者が、AIの活用におけるリスクとチャンスを理解して、最適な対応策を選べるようにする、という目的もあります。

レポートでは、日本が直面している背景として、少子高齢化で深刻な労働力不足になっていることをまず1つ挙げています。

そして、生産性向上が緊急課題になっていて、AIはその「一部の解決策」になり得るということを前提にレポートが書かれていました。

ただ、全体として「日本はAIの活用がかなり遅れている」と指摘しており、その理由として3つのポイントが挙げられていました。

 

1つ目は、AIの職場利用率が低いこと。

これは、日本の職場でのAI利用率がまだ8.4%と、非常に低い状況であることを指摘していました。

2つ目は、AI導入後の業務改善度が低いこと。

これも調査によって「AIで業務が改善した」と感じる労働者は平均で35.8%とのことで、この数値も低かったようです。

3つ目は、AIに関する職場での取り組みがあまり行われていないことです。

その施策の例としては、リスキリング、労働者との対話(労使対話)、あとはAIのガイドライン、安全で信頼できるAIの整備が必要だとしています。要は、AIの導入支援ですね。

 

ざっくりまとめますと、日本はAIの導入率と活用度が低くてかなり遅れているという指摘で、AIで生産性を向上させるためには

「研修」「リスキリング」「労使対話」「ガイドライン整備」「AI導入支援」

が必須、とのことです。

 

確かに、職場でAIを使っている割合が8.4%というのは、かなり低いですね。

これは世界でも最低クラスのようで、AI自体は業界に関係なくどの組織でも使うものだということを考えると、

「10社に1社も利用していない」というこの数字は、ちょっと本当か疑わしいと感じるぐらいに低いと個人的には思います。

もしこの数字が本当に正確なら、だいぶ日本やばいなと思いますね。

 

その一方で、少し興味深かったのは、日本の労働者はAIに対して比較的ポジティブに受け取っている、という点です。

メリットとして「生産性が上がる」「働きやすくなる」「給与アップにつながる可能性が生まれる」といった前向きな見方が強いことも分かります。

つまり、日本の労働者は「AIを使えばいいことがある」と感じているにも関わらず、実際には全然使えていない、というギャップがあるようです。

あと、レポートではOECDが日本に求める「7つの改善策」が挙げられています。

一応それも箇条書きで書くと、だいたい次のような内容です。

 

▼企業内研修やリスキリング支援を強化すること。

▼労働者との対話(労使対話)をきちんと行うこと。

▼AI活用のガイドラインを整備すること。

▼安全で信頼できるAI利用の環境を整えること。

▼AIによって仕事を失った人への職業訓練やマッチング支援を行うこと。

▼AI導入の障壁を下げること。

▼専門性の高いキャリアパス(ジョブ型など)を広げること。

 

内容的に、政府や企業の経営者などが動かなければならない部分が多いので、私自身もこの7つを見ても、正直何も面白いとは思いませんし、

労働者として勤務されている方がこれを見ても、あまりピンとこないのではないかと思いますね。

個人的に一番気になったのは、「AIの恩恵を受けにくい層」が2つ指摘されていたことです。

 

その2つというのは、「高齢労働者」と「非正規雇用」の2つです。

 

この2つの層はAIの利用率が低いだけでなく、AIによるメリットも小さいと指摘されています。

まあ、普通に考えればそうだろうな、という感じです。

これが何を意味しているかというと、「AIによる格差の拡大」です。

日本の労働者の4割が非正規雇用ですから、簡単に言うと、まずこの4割の非正規雇用の人たちは、仕事の現場でAIの恩恵は受けられない場合が多いと考えられます。

これはこのメルマガで以前から指摘してきた通りです。

恩恵を受けるどころか、AIによって取って代わられる=仕事を奪われる可能性が高い層が、この非正規雇用の方たちです。

私自身が結構な期間、昔、非正規で働いていたので、それはとてもよく分かります。

そして、高齢労働者もAIの恩恵を受けにくいというのは、企業や組織の中でどういう立場にいるかにもよるでしょうが、

そもそもの基本的な話として、高齢になるほど人間というのは新しいことをやるのが億劫になっていく側面が高まるわけです。

これまでネットやITを駆使して仕事をしていなかった高齢の労働者が、AIが登場したからといって、急にその恩恵を受けられるようになるとは到底思えません。

特に「受け身」で仕事をしているだけの人は、高齢かどうかに関わらず、AIの恩恵を受けられなくなるはずです。

何度かこのメルマガでも、私が以前経験していたコールセンターのオペレーターを例にとってお話ししていますが、非正規雇用のほとんどの仕事は、今後AIに取って代わられる可能性が極めて高いです。

非正規雇用の方でAIの恩恵を受けたいという方は、自分の職場での利用は基本的にはあまり期待せず、

副業などをしながら、そこでAIを活用する方向に活路を見いだした方がいいんじゃないかと、個人的には思います。

1つ間違いないのは、これは非正規雇用に限りませんが、

「上から指示された作業を、指示された通りにきっちりこなしているだけの人」

は、今後AIによって仕事(作業)を奪われるか、低収入の仕事しかできなくなるというのは、ほぼ確実だと思います。

もともと資本主義社会はそういうものですが、AI時代に入ってそれが加速する可能性が高いです。

あるいは「スーパー派遣社員」みたいな感じで、派遣社員などの非正規の立場でありながら、業務改善を提案したり、事業を任されるぐらいの仕事ができるなら別ですが、

大半の非正規の方はそれは厳しいと思いますので、別の形でAIスキルを身につけるしかないと思います。

 

この時、「AI」や「仕事」というものに対するベースの考え方が非常に重要になるのではないかと思っています。

学校のようなところでAIの使い方を学ぶ、というのも否定はしませんが、それだけでは状況はおそらく何も変わらない可能性が高いと思います。

というのも、AIというのは、それ単体でスキルを身につければ市場価値が高まるようなものではなく、

基本的な仕事力や稼ぐ力がある人が、AIを使うことで、よりその力が拡大されるという要素が強いからです。

逆に、基本的な仕事力や稼ぐ力が全然ない人が、AIだけ学んでも何もできないはずです。

「0に何をかけても0にしかならない」のと同じで、仕事の基礎力が無いとAIも役立ちません。

ベースの仕事力や稼ぐ力がある人ほど、その力に比例してAIはメリットをもたらしてくれます。

これが意味するのは何かというと、「AIは格差を拡大する装置」ということです。

なので、1番起こりやすそうな勘違いとしては、本業が非正規、もしくは正規社員だけどスキルが全然アップできない環境で仕事をしていて、

その状況で「AIの使い方だけ」を学校や塾のようなところで学ぶパターンです。

このパターンの何が問題かというと、ビジネスや仕事の本質的な力やスキルを実践で身につける機会がどこにもない状況で、AIの使い方だけ学んでいる形になるので、その学んだAIの知識を生かせる場所や機会がない、ということです。

大事なのは、スキルや仕事の経験や稼ぐ力が身につくような実務経験です。

その実務経験がどこにもないのに、AIの使い方だけ学んでしまっていると「宝の持ち腐れ」と言いますか、

最も重要な実務スキルがないので、いつまで経っても、少なくとも資本主義社会における有利な立場には立てないままの状態が続きます。

(それをよく理解した上で戦略的・計画的に学んでいるならいいと思いますが)

私が今、非正規の派遣社員で正規に転職もできない状況だったらどうするかと言うと、仕事は最低限、言われたことはきっちりこなした上で、プライベートの時間で副業をやりますね。

そして、その副業の実務の中でAIを使っていきます。

これが最も効率的で、長期的にも実力・稼ぐ力が身についていくパターンだからです。

これはAIに限らず資格試験などでも同じで、英語など将来的に確実に役立つ見込みがある試験ならともかく、

実務経験がないのに資格だけ取っても、その資格を生かすことはできないわけで、AIもそれと同じです。

このOECDのレポートを見ても、労働者のAIに対するポジティブな解釈は、どちらかというと私は「AIに過剰な期待をしている」ように感じられました。

つまり、「AIさえ使えるようになれば未来が開ける」と思っているパターンです。

そうではなく、市場で生き残るには「実務経験を積んでいる人がAIを使うことでうまくいく」というパターンしかないので、

実務経験がない場合は、何らかの形で実務経験を積みながらAIを講座・塾など何らかの形で勉強して学ぶ、

もしくは実践の場でAIを利用しながら身につけていく、という形にしないと、いつまで経っても報われないと思います。

結局、AIの時代になっても

「AIだけ学べばうまくいく」
「AIに任せれば全部自動化して楽ができる」

みたいなのは幻想で、実際のところは、

「地道に実務能力やスキルを身につけながら」
「AIを学びながら、AIを活用していく」

というパターンしか生き残る道はないと思います。

 


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